
「海外の友人に送金したい」
予約なしに来店した40代の女性客
戦場にいる恋人は、バカンスで日本に来たりはしない。
日本の銀行は国際的な金融犯罪に対してガードが甘く、マネーロンダリングの対応では、先進国において最下位のレッテルを貼られて久しい。口座の不正利用や犯罪で得られた資金を移転する、つまり、振込送金する際のチェックが足りないというのだ。
そのような指摘を受けても、ほとんどの銀行は反論もできないだろう 。振り込みや海外への送金手続きを受け付ける際、どれだけ送金目的をヒアリングしたり、エビデンスを見せてもらっているだろうか。
現代では書類のほとんどが電子化され、スピードも桁違いに早くなっている。商社を介在させない個人間での輸出入も増えている。こうした中、金融機関によるマネーロンダリングへの対応はますます重要になっている。
昨年秋に40代の女性が来店した。すぐに海外の友人にお金を送りたいとのこと。だが、私が勤務する銀行では、海外送金の手続きは事前予約が必要だ。テレビ電話の設備がある窓口で、本部の外為専門部署とリモートで繋ぎ、手続きを進めるためである。
だが、こうした仕組みは、誰もが知っているわけではない。大きな銀行だからいつでもどこでも手続きができると思われても、無理はないだろう。
「目黒課長、ロビー受付の小野です。今、女性のお客さまが海外送金をしたいとのことですが、ご予約をいただいていません。どうしてもすぐに手続きをしなければならないそうで、相談したいとのことです」