いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

頭の悪い人がやっている「最悪の休みの過ごし方」ワースト1Photo: Adobe Stock

心を静かにする

思うに、秩序だった心の持ち主であることを示すいちばんの兆候は、一か所にとどまって一人で過ごせる能力があることだ。(セネカ『ルキリウスに宛てた道徳書簡集』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より

 私は一人で一か所にとどまっていることは得意だ。一度座ったらなかなか動かないし、一人でいることに何の苦痛もない。

 ただし、それは物理的な話。つねにスマホであちこちの情報にアクセスせずにはいられない私は、心理的な意味では、一人で長い時間一か所にとどまるなんて無理ゲーである。10分ももたない。

 正直に言って、私はスマホ中毒の自覚がある。いまの世の中、かなりの割合の人がスマホなしではいられないとは思うのだが、その中でも私は重度のほうではないだろうか。

自然の中で休むはずが……

 休みの日も、いつのまにかスマホに時間を奪われている。自然の中でゆったり過ごすつもりでキャンプ場に行っても、まずWi-Fiを探し、焚火の前でスマホをいじっているくらいだ。われながら頭の悪い行動である。

 だが、それほどスマホをチェックしたい欲求をおさえるのは非常に困難なのだ。

 そういう人の心は、「秩序だっている」と言えるだろうか? いや、まったく秩序だっていない。

 脳はつねに警戒態勢で、通知が来たり、何か情報を見に行くたびに喜んだり落ち込んだり騒がしいのである。

スマホから離れて、一人でじっとしてみる

 私は意を決して、スマホを一切見ない時間をつくった。スマホ依存対策アプリを探し、「時もち」というアプリを使用することにした。本気で対策したい人に評判がよさそうだったからだ。

 ポイントは、設定した時間を過ぎるまでは、ブロック解除に罰金がとられるという点。たとえば「1時間はSNSや動画を見ない」と決めた場合、その時間内にSNSを見るためには100円を支払わなければならない。

 スマホ依存度が高い人は、このくらいの縛りがないと簡単に決まりを破ってしまうのである。

 私はこのアプリを使ってスマホにさわれないようにし、25分ほど一人でじっとしていた。

 最初は、「さわれないと思うと余計にさわりたくなるんだよなぁ」などと考えていた。

 しかし、次第にスマホから意識が離れていき、仕事についてとか人生についてとか考え始めた。

 ポジティブなこともネガティブなことも思い浮かぶ。そうこうしているうちに25分間は終了した。意外とあっという間である。

 スマホで情報チェックをしているときは、有益な時間をすごしているつもりだが、ほとんどの時間、自分とは関係のない情報にふれては反応しているだけだ。

 スマホから離れて一人で考えごとをすると、時間がゆっくりと流れ、静かに考えを深めることができる。

 以来、私のスマホ依存は改善傾向にあり、心の秩序も整ってきた……ような気がする。

ストイシズムで「自分の心」と向き合う

 つねに大量の情報にさらされていれば、秩序だった心を保つのは難しくなる。

 ときどきは情報から離れて自分の心に向き合ってみるとよいのではないだろうか。

 本書で読める、セネカをはじめとしたストア哲学者たちの言葉は、自分の心との向き合い方を教えてくれる。

 それぞれの言葉に寄せられている、著者からの問いかけも実践の助けになるはずだ。

(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)