“球界のご意見番”広岡達朗が「新阪神監督・藤川球児」に賛成できない2つの理由Photo:SANKEI

御年93歳の“球界のご意見番”広岡達朗氏が、昨シーズンを振り返りつつ、阪神の監督に就任した藤川球児氏をはじめとして、昨今のプロ野球の後輩たちへ檄を送る。本稿は、広岡達朗『阿部巨人は本当に強いのか 日本球界への遺言』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

連覇を逃した昨年の岡田阪神
今年の問題点は新監督・藤川球児?

 前季優勝の阪神は2024年、首位・巨人に3.5ゲーム差の2位に終わった。チーム打率.242はリーグ5位と振るわなかったが、防御率2.50は巨人の2.49に次ぐリーグ2位だった。

 阪神は5月末まで首位を守ることが多かったが、その後は一進一退で、広島と巨人の首位攻防を追いかける展開になった。

 9月に入ってからは猛追を続け、12日に急降下の広島に代わって2位になったが、この日広島に3連勝して首位固めに成功した巨人に追いつくことはできなかった。

 では、昨季に続き健闘した岡田彰布監督がなぜ退任したのか。スポーツマスコミは意外なニュースとして大騒ぎしたが、旧知の新聞記者の情報によると、阪神のフロントは岡田監督と関係が悪く、以前から辞めさせる意向を持っていたらしい。岡田監督就任の際、後ろ盾の阪急阪神ホールディングス・角和夫会長が球団に「2年間」という期間を示していたと見られ、球団も阪急側が監督人事に介入するのは今回だけと認識しているという。結果がどうであれ、約束通り2年で退任というわけだ。

 私は財界の複雑な関係や監督退任の経緯は知らないが、岡田の任期が2年なら2年で交代したらいいではないか。そんなことより、阪神で立派な実績を残した岡田はまだ60代。また縁があったら弱いチームに行って、強くして優勝したら立派だ。そうすれば、岡田はひと回り大きな指導者になるだろう。

 それより問題は、藤川球児が次期監督になったことだ。

野球の勝負は
7割がた投手で決まる

 彼は投手としては立派な実績を残しているOBだが、私はもともと投手出身の監督には賛成できない。監督に適しているポジションは、野球の複雑な動きや勝負について勉強し、経験を積んでいる捕手か内野手出身がいい。

 さらに藤川の不安は、二軍監督やコーチなど指導者の経験がないことだ。岡田はもちろん、巨人の阿部慎之助やヤクルトの高津臣吾、DeNAの三浦大輔、ソフトバンクの小久保裕紀、オリックスの中嶋聡、楽天の今江敏晃、ロッテの吉井理人など、ほとんどの監督は二軍監督やコーチを経験している。