「文春砲」を陰で支える“スーパー弁護士”の素顔、巧みすぎる法廷戦術に脱帽するしかない…文春の守護神、喜田村洋一弁護士 Photo:JIJI

裁判官や検事にも一目置かれる
『週刊文春』の守護神とは

 メディアの人間ならほとんど誰でも知っているスーパー弁護士が、文藝春秋社の顧問弁護士でもある喜田村洋一(きたむら・よういち)氏です。文春側の弁護士としてジャニーズ事務所に勝訴した名誉棄損裁判だけでなく、小沢一郎の陸山会事件を無罪にしたうえ検事の調書捏造を暴いたり、カルロス・ゴーンの片腕グレッグ・ケリー元日産自動車代表取締役を無罪にしたりと、「無罪請負人」としても有名です。

 東大法学部卒、ミシガン大学ロー・スクール卒という肩書を聞いただけで、極めて冷徹な人物を想像されるかもしれません。その喜田村氏がこのほど著書を上梓しました。題して『報道しないメディア――ジャニーズ性加害問題をめぐって』(岩波ブックレット)。今回は、この本の中身を紹介をしながら「文春の守護神」喜田村弁護士の素顔に迫りたいと思います。

 文春時代、私は何度も喜田村弁護士と法廷に出ましたが、その度に裁判官や検事たちからの評価が高いことがわかりました。裁判官が「あなたの著作を読みました」と本の感想を述べながら、法廷でのやりとりをするシーンを何度も見ています。     

 もともと文春が彼に顧問弁護士をお願いした理由も、ロス疑惑で三浦和義氏の弁護人となり、マスコミ相手にほとんどの案件で勝利した実績を見て、「これほどの凄腕弁護士なら、ぜひ文春に」と思ったのが、きっかけでした。

 ジャニーズ問題は下火になりましたが、その後の松本人志裁判、そしてフジテレビの中居正広事件を通じて、すべてのメディアには共通の問題が存在します。ジャニーズ問題で「反省」を語りながら、その後も続く同じような問題に対して同じような内容の報道しかできないことです。「ジャニー喜多川氏の性加害問題に向き合えていなかったことを反省したいのに、上司に無視された」と嘆いていた若い記者たちや、SNSに負けて収益が激減しつつあるメディアの幹部たちの「言い訳」は、喜田村弁護士の人権感覚にどう映るでしょうか。

 喜田村氏は、弁護士だけに相当理屈っぽい著書が多いのですが、新著『報道しないメディア』は明快です。「メディアはなぜジャニーズを報じなかったか」というテーマを、一種の模擬法廷のようにして、メディアの罪を論理的に暴いていきます。「報じなかった理由について」、喜田村流の「仮説」を立て、言い訳を打ち砕いてくれるのです。その緻密な論理を読者諸氏にせひ知ってもらいたく、これからこの「模擬法廷」の概要を短く紹介していきます。