適量飲酒を守るには「飲み仲間」が大事、蘭アムステルダム大の研究よりPhoto:PIXTA

 今年の全国生活習慣病予防月間(毎年2月)のテーマは「少酒」だ。

 一昔前は「酒は百薬の長」とされ適度な飲酒は健康に良いとされてきたが、最近は旗色が悪い。

 日本人の男性では、1日日本酒1合未満(エタノール換算およそ20グラム)から全がんリスクがじわじわ上昇し、2合以上では1.5倍に増加する。部位別では男女を問わず、食道がん、肝がん、大腸がんのリスクであるほか、閉経前の女性は乳がんリスクが1.7倍に上昇することも判明している。

 飲酒は高血圧症、脂質異常症、高血糖などの生活習慣病、脂肪肝とも関連が強い。アルコール分解能が低く、お酒に弱い人ほど影響は大きいので生活習慣病の予防には確かに「少酒」が望ましい。

 問題になる飲酒行動には、個人の遺伝的背景や社会環境が複雑に絡み合っている。たとえば社会・経済的な地位が高い人は飲酒機会が多い一方で、問題飲酒に陥る可能性は低いとされてきた。

 蘭アムステルダム大学の研究者らは、1948年から続く疫学調査のデータから、飲酒行動と家族や友人、ステータスの高い職についているか否か、など個人を取り巻く環境との関連を調べている。

 その結果、個人の飲酒行動は予想以上に「飲み仲間」に影響されていることが判明した。大量飲酒者と行動をともにすると自分の飲酒量が増え、飲酒量が増えるにつれてさらに「大酒飲み」とのつながりが増し、ますます飲酒量が増えるという悪循環に陥ってしまう。

 逆に少酒・禁酒仲間が増えれば、飲酒量は減っていくことも示された。自分が適度な飲酒量を守ることで周囲に良い影響を与え、また仲間からも良いフィードバックがある、ということだろう。

 一方、社会的評価が高い職に就いているか否かと飲酒行動との間には関連が見られなかった。研究者らは「飲酒行動については職業などの単純な側面より、人間関係など複雑な社会環境の影響に目を向けるべき」としている。

 さすがに飲酒の強要は減っただろうが、自分の飲酒行動が周りの健康リスクにも波及する可能性があると意識しておこう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)