日本経済には、すでに「底入れ観測」が広がっている。だが、油断は禁物だ。世界危機の震源地となった米国はこれから“二番底”を迎える可能性があるし、「世界経済の牽引役」と言われる中国のパワーも、現時点では限定的だからだ。経済分析の第一人者である熊谷亮丸・大和総研シニアエコノミストが、景気回復に立ちはだかる壁の正体と、本格回復のタイミングを鋭く斬る。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、撮影/宇佐見利明)

くまがい・みつまる/大和総研経済金融調査部シニアエコノミスト。1989年東京大学卒、日本興業銀行入行。その後みずほ証券エクイティ調査部シニアエコノミスト、メリルリンチ日本証券チーフ債券ストラテジストなどを経て、現職。経済メディアが主宰するアナリスト・エコノミストランキングでは、上位1~3位の常連。

――昨年9月のリーマンショックに端を発する世界的な景気後退に、本格的な「底入れ」が訪れたと言われている。日本経済の回復を期待できるポイントは何か?

 昨年末~年初まで、専門家の見方は悲観論一色だったが、今は随分楽観的になっていると思う。

 日本経済を飛行機に例えると、現在は「3つの補助エンジン」によって支えられている。「中国経済の底入れ」「大型経済対策」「在庫調整の進展」だ。

――その「補助エンジン」には、具体的にどんな推進力があるのか?

日本の「実質GDP成長率」予測

 まず、中国経済の底入れに伴い、対中輸出の拡大が望めることだ。日本の対中輸出は、中国のGDPとあまり連動しないが、中国の電力生産量とは連動性が高い。ここに来て、中国の電力生産量が着実に回復していることからも、今後は輸出拡大が期待できる。