米国、韓国、中国、そしてロシア、2025年、日本との関係を大予測【佐藤優】2024年12月7日に韓国ソウルの大統領府で演説した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領。3日に非常戒厳を宣言したことを謝罪した。尹大統領に対する弾劾訴追案は7日夜、国会で採決が進められたが、不成立となった AFP=JIJI

2024年の世界は、選挙の年でした。韓国、英国の総選挙では野党が大勝し、米大統領選挙では、野党候補のトランプ氏が返り咲き――。米・韓・中、そしてロシア。日本との関係を、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が読み解く。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)

2024年は、選挙の年
変化や変革を求める世界

 2024年の世界は、選挙の年でした。その多くで、与党や与党の候補が敗れました。韓国の総選挙で、最大野党の「共に民主党」が大勝。英国の総選挙では野党の労働党が大勝し、14年ぶりの政権交代が起こりました。米大統領選挙では、野党候補のトランプ氏が返り咲きを決めました。

 こう見てくると、順当に再選を決めたのは3月に選挙があったロシアのプーチン大統領くらいです。与党が支持を失うのは世界共通の傾向であり、多くの国の人々が現状に不満を抱き、変化や変革を求めていることが分かります。

 12月7日、選挙ではありませんが、韓国の国会で重大な投票が行われました。尹錫悦大統領に対する弾劾訴追案です。発端は3日夜、尹大統領が唐突に「非常戒厳」を宣言し、6時間後に撤回したことでした。尹大統領は非常戒厳の宣言を、日本はもとより同盟国である米国にさえ事前通報しませんでした。朝鮮半島情勢を巡り、韓国と一緒に外交ゲームを行うことの難しさも露呈したのです。

 米国政府のキャンベル国務副長官は、「尹大統領はひどく判断を誤った」と批判し、サリバン大統領補佐官も「深い懸念」を表明しました。バイデン政権は、尹大統領を見限ったとみていいでしょう。韓国の政治情勢は北朝鮮より予測不能であるという認識が、主要国のインテリジェンスコミュニティーで共有されるようになりました。トランプ新大統領が就任すれば、日米韓3国の安全保障協力は様変わりするでしょう。

 韓国政治の混乱はしばらく続き、改善傾向にあった日韓関係も後退を余儀なくされると思います。