「タイトルに共感した」「優しく包んでくれるような本」「どんどん読み進めていけました」など、読者からの共感の声が続々届いているベストセラー『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(著:キム・ダスル、訳:岡崎暢子)は日韓累計35万部を突破した。本書では、「気分」をコントロールし、毎日を機嫌よくすごすために必要なことが軽やかな語り口で書かれている。本稿では、『機嫌のデザイン まわりに左右されないシンプルな考え方』の著者であり、プロダクトデザイナーの秋田道夫氏に、かっこよく生きるコツについて伺った。(取材・文 宮本恵理子、構成 ダイヤモンド社書籍編集局)
ダサい大人は「優柔不断」
――秋田さんは、どんな人に対して「ダサい」と感じますか。
秋田道夫(以下、秋田) 「ダサい」ですか。人の事をダサいと評する事自体がダサいので言いにくいですが、あえてパッと浮かんだのはメニューを迷う人。ランチを一緒に食べましょうとお店に入って席を通された後、食べたいものを決められずにあれこれ迷って時間を使う人は少し苦手ですね。
何事もさっさとやるのがかっこいいというのが、わたしの美意識です。公共の場所では次に来る人を待たせたく無いんです。おかげでお店や電車に忘れ物していますが、「振り返る」のがダサいなと感じるのでカッコつけてます。
――何事も早く。それは仕事でも言えることでしょうか。
秋田 自分で言うのもなんですが、わたし、仕事がすごく早いと思います。
デザイナーの仕事というのはアイデア勝負ですから、相手の要望をよく聞いた後にじっくり考えを練ってからラフプランを提出する人が多いと思います。1週間か2週間、時間をかけるのがふつうでしょうね。
前回の繰り返しになりますが、わたしの場合は、もうその場でパッと考えます。手元のスケッチブックにラフな絵を描いたり、Macで素案をつくって画面上で色まで塗ってみたり、早いものです。だいたい初回の打ち合わせが終わる頃には、アイデアがまとまっているんです。すでにアイデアがあるのに出さないという出し惜しみは「ダサい」ですね。
でも、すぐに出しちゃうと、なんだかあまり考えていないみたいですし、相手からしてもありがたみがないでしょう? それに「すぐに決めてください」というプレッシャーを与えてしまうかもしれないですしね。だから、わざと一晩だけ寝かせて翌日に出したりするんです。
自己満足ではなく
「自己をやり切る」
――「これでいい」と迷わず決められる、自信の源を知りたいです。
秋田 たしかに、自信はあるのでしょうね。いい意味で「うぬぼれ」が強いほうだと思います。
なぜ自信を持てるかというと、今日に至るまで他人と比べることをしてこなかったからですよ。美術の予備校時代も大学時代も会社に入ってからも、他の人がどんな絵を描いているか、どんな仕事をしているか、ほとんど見た記憶がありません。
大学を出て入ったオーディオメーカーの1年目に大きなデザインコンテストに応募することになったのですが、そのときも過去の受賞作を見て対策を練ったりはしませんでした。でも、ありがたいことに1位を獲ってしまった(注:1977年に第26回毎日ID賞一般部門特選一席を受賞)。その時に「周りに合わせなくても1位になれる」と気づいてしまって、そのまま成功体験としてわたしに定着したのだと思います。
――自己満足でいい、という確信ですね。
秋田 自己満足というより、自己をやり切るという感覚です。自分がやれることをとことんやり切ったら、あるレベルには達するのだと。
それにしても、当時の先輩たちも面白くなかったでしょうね。入社して半年しか経っていない若造が優勝したものですから。そのときの部長さんが上手で、受賞を報告する会で皆さんの前で「秋田君はこんなことで天狗になるタイプではないから大丈夫ですよね」と、わたしのほうを見てニッコリ笑ったんですよ。
それで天狗になりそびれました。先手を打たれちゃいましたね。
1953年大阪生まれ。愛知県立芸術大学卒業。ケンウッド、ソニーで製品デザインを担当。1988年よりフリーランスとして活動を続ける。代表作に、省力型フードレスLED車両灯器、LED薄型歩行者灯器、六本木ヒルズ・虎ノ門ヒルズセキュリティゲート、交通系ICカードのチャージ機、一本用ワインセラー、サーモマグコーヒーメーカー、土鍋「do-nabe240」など。2020年には現在世界一受賞が難しいと言われるGerman Design AwardのGold(最優秀賞)を獲得するなど、受賞多数。2021年3月よりX(@kotobakatachi)で「自分の思ったことや感じたこと」の発信を開始。2022年7月からフォロワーが急増し、10万人を超える。著書に『機嫌のデザイン まわりに左右されないシンプルな考え方』(ダイヤモンド社)、『かたちには理由がある』(早川書房)がある。