「自分は何も持っていない」「いつも他人を妬んでしまう」「毎日がつまらない」――誰しも一度は感じたことのある、やり場のない鬱屈した思い。そんな感情に寄り添ってくれるのが、クリープハイプ・尾崎世界観氏も推薦する『ぼくにはなにもない 愛蔵版』。この記事では、著者の齋藤真行氏に教えてもらった「ネガティブな気持ちを解消する方法」を紹介する。(構成/ダイヤモンド社・林拓馬)
心を守る3つの視点
人に言われた些細な一言が頭から離れず、ずっと気にしてしまう人もいれば、全く気にせず軽やかに流せる人もいます。
この違いは一体どこから来るのでしょうか?
このテーマについて、考えるところをいくつかの視点から整理してみます。
・多角的な視点を持つかどうか
物事には必ず多面性があります。表があれば裏があり、同じ出来事でもさまざまな角度から見ることができます。
しかし、人の言葉というのは多くの場合、一つの視点から切り取られた「平面的」なものです。
「こうだからダメだ」「これが正しい」というように、特定の面だけを強調した発言がほとんどで、これは言葉の性質上避けることができません。
多角的な視点を持つ人は、そうした言葉を「これはその人が見ている一面にすぎない」と相対化して捉えることができます。
「この人はこの角度から見ているからこう思ったのだな」と考え、その言葉を絶対的なものと考えないので、過度に気にすることがなくなります。
一方で、物事を一面的にしか捉えられない場合、一面に過ぎないはずの言葉をあまりに深刻に受けとめて強烈な影響を受けてしまい、気に病む原因になります。
・他者の見方を尊重しつつ、自分との違いを認める
人から何かを言われたとき、その言葉に込められた背景や、その人がどんな景色を見ているのかを考え、理解するよう努めると、その言葉が出てきた理由がわかります。
その理由がわかるだけで、理不尽な言葉を浴びせられても、「そういう理由があって、あの言葉を言ったのか…」と背景が理解できるので気に病むことが減ります。
また「この理由から、この人にはそう見えている」と捉えることで、自分とは違う視点を尊重しつつも、「それが私の全てではない」と線引きをすることができます。
冷静に振り返り、「確かに私に落ち度があったかもしれない。でも、それだけではなく、相手にも見えていない側面があるのではないか」とバランスよく考えることができます。
こうしたスタンスを取ることで、人の言葉を必要以上に重く受け止めず、自分自身の視点を保つことができます。
・心のキャパシティ(容量)を適切に割り当てる
自分の心を、一つの「マンション」としてイメージしてみるのも有効です。
マンションには複数の部屋があり、それぞれに家族、友人、同僚など、私たちの生活に関わる人たちが住んでいると考えてみてください。
そのとき、人間関係における重要度に応じて、部屋の大きさのイメージを変えてみましょう。
たとえば、家族や親友は大きな部屋を占めるはずです。
一方で、それほど親しくない職場の上司や同僚、知人は、小さな部屋に住んでいます。
小さな部屋から聞こえてくる声は、それに応じた小さな割合で部屋を占めるべきで、より大きな部屋からの声は、それに応じて大きな割合を占めるなら、全体のバランスが保たれます。
「それぞれの人の言葉が私の心に占める割合」を考え、その発言の重要性を全体に即して適切な割合で受けとめることが大切です。
これができれば、重要でない言葉を重く考えすぎたり、逆に重要な言葉を軽く考えすぎたりするトラブルが減って、メンタルも関係も安定してくるでしょう。
(本記事は『ぼくにはなにもない 愛蔵版』の著者、齋藤真行氏が特別に書き下ろしたものです)