投資にリスクはつきものだが、昨今のインフレの影響により投資しないのもまたリスクだという考え方もある。投資術に関する情報は数多くあるが、はたして「正解」などあるのか。数多くの受賞歴を持つ金融ジャーナリスト、ニコラ・ベルベが「投資の最適解」を指し示す。本稿は、ニコラ・ベルベ著、土方奈美訳『年1時間で億になる投資の正解』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
株式投資は本当に
「火遊び」なのか
若い頃の株式市場とのかかわりが、その印象を生涯にわたって決定づけてしまうこともある。
親戚の叔父さんが2000年代初頭のドットコムバブル(編集部注/アメリカを中心に起こった、インターネット関連企業の株価が急騰した経済現象のこと。ITバブルとも呼ばれる)で退職金をすっかり失ってしまったら、あなただって怖気づいて絶対に株式市場で「火遊び」などしないと心に誓うだろう。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まった当初の、あの劇的な株価下落が記憶に残っている人もいるかもしれない。午前の取引だけで平均株価が11%下落するような日もあった。1930年代以来の下げ幅だ。
1968年から1985年の間、株式市場の時価総額はほとんど上昇しなかった。90年代はひたすら上昇した。2000年代は暴落に次ぐ暴落。2010年代はロケット並みの急上昇、それが2020年の新型コロナ危機で一気に(一時的ではあったが)下落した。2022年も再び株価は下落した。
こうした市場の乱高下によって、ある事実が覆い隠されてしまう。株式市場は何世代にもわたって潤沢なリターンをもたらしてきたという事実が。あらゆるバブル、下落、大暴落を差し引いても、だ。
株式指数としてよく引用される、アメリカの主要30銘柄のパフォーマンスを測るダウ・ジョーンズ工業株価平均。1900年代が幕を開けたときは66ドルだったのが、100年後の1999年末には1万1497ドルになっていた。
配当金(企業が利益還元策として年に2~4回株主に支払うお金)を再投資したとして計算すると、20世紀の初めにダウ・ジョーンズ指数に含まれるようなアメリカを代表する大企業に1ドル投資していれば、100年後には1万8500ドル以上になっていた。
1ドルが1万8500ドルに化けるような市場に投資して、なぜ悲惨な目に遭うのか。
市場が仕掛けるワナにはまるからである。
アイザック・ニュートンと同じように、絶対に儲かる傑出した会社を見つけて虎の子のお金を突っ込む。あるいは有名な専門家が暴落は近いと言うのを聞き、嵐に巻き込まれないように投資した資産を売却してしまう。