ホンダが日産に突き付ける「2つの冷酷条件」判明!統合最終合意まで半年以上の“改革チェック期間”を設定Photo:Anadolu/gettyimages

日産自動車と統合に向けた協議を始めるホンダの「強気の交渉姿勢」がダイヤモンド編集部の調べで判明した。トップ会談による大筋合意の前に、日産の経営再建に向けた構造改革のプランの提示を求める。その後は、半年以上かけて日産の構造改革の進捗を見極め、統合を最終判断するという。特集『日産 消滅危機』の#8では、ホンダが日産に要求する交渉妥結の二つの最低条件や、協議のスケジュール感などを明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

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 ホンダと日産自動車が統合に向けた協議開始で合意したと報じられた12月18日、両社の株価は明暗が分かれた。日産株が前日比24%高となったのと対照的に、ホンダ株は一時4%安となり年初来安値を更新し、3%安で取引を終えた。

 あるホンダの役員は、「(統合に向けた協議の)ニュースが出たら日産の株価が上がり、ホンダの株価が下がる。これは予想通りだった」と話した。この見立ては、至極もっともといえる。

 日産は11月7日、北米でのクルマの販売の不振などで、2025年3月期の通期営業利益見通しを7割下方修正したが、リストラの具体策を打ち出すことができていないなど経営の混乱が続いている。

 他方、ホンダはハイブリッド車が好調で北米で販売台数を増やしており、25年3月期は前年と同水準の利益を確保できる見込みだ。

 つまり、両社の統合はホンダが日産に「助け船」を出すという側面が強い。

 日産を追い詰めているのは収益の悪化だけではない。同社の筆頭株主である仏ルノーが日産株の持ち分(ルノー保有分と信託会社保有分の合計で35%)を売却する意向を示しており、その買い手を探さなければならない状況にある。

 日産の新たな「親会社」として、台湾の電子機器受託製造サービス大手、鴻海(ホンハイ)精密工業が名乗りを上げるなど、日産のパートナー探しは重大局面を迎えていた(詳細は本特集の#7『【スクープ】台湾ホンハイも日産に買収を提案!ホンダとの統合交渉の裏で日産が滑り込ませた「買収防衛条項」』参照)。

 ただし、当然のことながらホンダは、日産を救済するために統合に向けた交渉のテーブルに着くわけではない。

 前出のホンダ役員は、「足元の株価ではなく、(両社が統合して商品を出す)5年以上先に、どういうシナジーを生めるかを考え、中長期の視点で交渉する」と話す。

 実際のところ、ホンダとて、安穏としていられる状況ではない。中国や東南アジアでは日産と同様に、中国のEV(電気自動車)メーカー、BYDなどにシェアを奪われ、苦戦を強いられている。今後、普及が予想されるソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV。ソフトウエアがクルマの性能を決める)の開発でも中国勢に大きく後れを取っている。

 提携戦略もつまずきつつある。ホンダは一時、米ゼネラル・モーターズ(GM)をEV時代のパートナーにしようとしたが、EVの共同開発を中止したり、完全自動運転のタクシー事業から撤退したりと、協業は尻すぼみ状態となっている。

 SDVの開発費を折半できるパートナー探しはホンダにとっても急務なのだ。しかも、「提携相手となり得る企業は、日産を除くと、一部の欧州自動車メーカーに限られるなど、選択肢が少なくなっている」(同)。

 とはいえ、ホンダと日産の財務状況や商品力を比較すれば、前者の方がやはり余裕があり、交渉ポジションも有利になることは間違いないようだ。

 次ページでは、ホンダが日産に求める二つの条件を明らかにする。また大筋合意から最終合意に至るまでのスケジュール感、その間もホンダが日産に要求し続ける収益力の改善についてもつまびらかにする。