「富の源泉は変化にあり」と未来学者のアルビン・トフラー氏は言った。情報化社会の到来をいち早く見抜いたその目には、変化に取り残された日本の厳しい未来が映っていたようだった。(「週刊ダイヤモンド」2006年12月30日号掲載)
アルビン・トフラー(Alvin Toffler) アメリカの未来学者。1928年10月ニューヨーク生まれ。世界的ベストセラーとなった『未来の衝撃』(1970年刊)『第三の波』(1980年)『パワーシフト』(1990年)『富の未来』(2006年)など著書多数。中国の「人民日報」は、現代中国の形成に貢献した50人の外国人の1人に同氏を挙げている。 Photo(c)AP Images |
―『富の未来(原題:Revolutionary Wealth)』(2006年刊)は、『第三の波』(1980年刊)の主題だった情報革命が具体的に社会をどう変えていくかの精察と見ていいでしょうか。
そのとおりです。情報革命の先には、必ずや困難な社会的変化が待ち構えています。組織を変えようとすれば、人びとの抵抗もあるし、新しく誕生した勝ち組と負け組とのあいだの衝突もある。官僚的な仕組みによって立つ日本のような国にとっては特に厳しい未来が待ち受けていることでしょう。
―その痛みを伴う社会的変化を、富の革命と呼んだのはなぜですか。
社会の深層における変化は、これすなわち富のシステムの変化にほかなりません。しかも、それは単純な変化ではない。たとえば、患者の力が増すことで医者の“権力”が小さくなるように、社会の役割構造が変化する。学校、企業、政府などさまざまなところで境界が崩壊して、新しいテリトリーが生まれる。これは正しく富の革命なのです。
―経済活動はどのように変わっていきますか。
富のシステムは、カネ儲けを目的とする貨幣経済と、非金銭的な経済との二つから成り立っています。その両者がもっと深く繋がり合うようになるでしょう。
わかりやすい例は、個人で生産活動を行なう消費者「プロシューマー」の存在です。私は、プロシューマーが今後どんどん増えていくと見ています。理由は、貨幣経済が洗練されたツールを提供するからです。たとえば、デジタルカメラを持つ消費者はフィルム店や現像所の仕事をしているのと同じといえます。モチベーションはいろいろで、ボランティアが防火活動に参加するのは社会に恩義を感じていたり、あるいは単に興奮したいだけかもしれません。