日本郵政グループと日本通運の宅配便事業提携が、正式統合を待たずに“前倒し”で実施される。連携プロジェクトが、4月に早くも始まるのだ。
郵政民営化によって日本郵政グループが発足した直後の昨年10月初旬、郵政と日通は、両社の宅配便事業を統合すると発表した。今年10月をメドに宅配便事業の共同出資会社を設立するスケジュールの下、今年4月に予定している最終契約締結に向けて、現在、事業実態を把握するための調査を実施している。
一方で、水面下で並行して進んでいる計画がある。4月から“サービスドライバー制度”を導入する郵便事業会社8支店に、日通社員を送り込むというものだ。
現在の国内宅配便市場は、ヤマト運輸と佐川急便の2強状態。シェア(2006年度取り扱い個数ベース)を見ると、1位のヤマトが37%、2位の佐川が32%、3位の日通が11%、4位の郵政が8%。郵政と日通は、統合によってシェアを19%にまで高めるが、両社とも宅配便事業は採算が取れていないと見られるだけに、“弱者連合”にすぎない。3強へと昇格するハードルはそうとう高い。
“対・ヤマト”“対・佐川”の策として、郵政が導入を急いでいるのが、サービスドライバー制度なのだ。大手各社に倣い、ドライバーが担当地域に密着し、集荷や配達時に営業もこなすというもの。「ゆうパックセンター方式」として港北支店(神奈川)、品川支店(東京)ですでに試行しており、この4月には、所沢(埼玉)、日本橋(東京)、小石川(同)、京橋(同)、上野(同)、厚木(神奈川)、港南(同)、登戸(同)の関東圏8支店に拡大する。
日通は口を閉ざすが、この8支店に日通社員が送り込まれる計画が進行中。狙いは日通が持つサービスドライバー制度のノウハウを早期に共有し、きめ細かいサービスの提供によって営業を強化することだ。郵政陣営には、民営化の混乱による人手不足や集配局統廃合によってサービスが低下し、顧客離れが生じている焦りもあろう。
8支店での試行は、2社連合の効果を図る試金石にはなる。だが、これによって、完全統合が早まると見るのは早計だ。
民間クオリティの日通と、国営だった郵政のあいだには、情報システム、集配システムとも大きなギャップがある。「今年10月は形式だけの統合で、両社のシステムが当分共存するのではないか」と予想する業界関係者は少なくない。そうであれば、収益改善は遅れる。市場成長が鈍化しているなかで経営を効率化するために、従業員の大量リストラという難題も待っている。
“前倒し提携”に踏み切るものの、完全統合にメドを立てるのは非常に難しいというのが、現実である。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井真粧美)