ルール改正の詳細が判明!監督指針の改正・第一弾 既存論点を解説

一連の損害保険業界の不祥事案を経て保険業法が改正されるのに付随し、具体的なルールである監督指針も改正される。そこで、改正第1弾となる監督指針の中身をいち早くお届けする。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

監督指針の第1弾がまもなく公表
既存論点と新規論点の二つに大別

 旧ビッグモーター問題や損害保険会社4社によるカルテル事案、個人情報の漏えい問題など損保業界の一連の不祥事を受け、保険業法の改正や監督指針の見直しなど保険のルールが大改正されることになっている。

 保険業法の改正案については2025年3月7日に閣議決定されたが、保険業法はあくまで大きな方向性を示したものであり、具体的な中身は監督指針などに委ねられている。それだけに、保険業界は固唾をのんで監督指針の改正案が示されるのを待っている状態だ。この監督指針は複数回に分けて公表され、パブリックコメントに付される予定だが、まもなく第1弾の監督指針が公表される。その全貌が、ダイヤモンド編集部の取材によって明らかとなった。

2025年5月に公表される「保険会社向けの総合的な監督指針(新旧対応表)」の文書案2025年5月に公表される「保険会社向けの総合的な監督指針(新旧対照表)」の文書案 Photo by Akio Fujita 拡大画像表示

 今回、見直しがなされる監督指針は、大きく二つに分けられる。

 まず一つ目は、既存の論点である。営業面の大きさ故に忖度(そんたく)しがちな保険代理店に対して「適正な保険募集管理態勢の確立」を求めること。そして、保険会社が「過度な便宜供与」を行う見返りとして優先的に保険商品を推奨してもらうことを防止すること。一方、代理店側についても保険会社から過度な便宜供与を受けることがないように「保険募集人の体制整備」を行うことだ。加えて、企業保険のシェア確保に影響を及ぼしてきた「政策保有株の縮減」が求められている。

 二つ目は、新規論点だ。損保プロ代理店を長年苦しめてきた「代理店手数料ポイント制度の見直し」について、保険会社に規模や増収率に偏った評価にならないようにくぎを刺した。「保険代理店に対する出向」については、出向者の存在が過度な便宜供与として機能し、商品選択の優先的な取り扱いとならないようにするとともに、個人情報などの不適切な共有を防止する措置を講ずることとしている。

「保険仲立人の媒介手数料の受領方法の見直し」については、これまで仲立人は顧客から手数料を受領できなかったが、顧客に手数料を請求できるようにするとともに、その際の注意点について列記された。また、顧客等に関する情報管理態勢については、顧客情報にアクセスできる役職員を限定する「Need to Know原則」を踏まえて適切に管理することとしている。

 なお、「共同保険のビジネス慣行の適正化」についても公表する予定で議論が進められてきたが、他の論点と合わせて公表することとなり、第1弾での公表は見送りとなっている。

 本稿前編では一つ目の既存の論点について、次ページで詳述していく。