四期連続の最終赤字に喘ぐパイオニアが、10月30日の中間決算発表時に、2009年3月期の通期見通しを下方修正する方向で調整していることがわかった。

 これまで、通期見通しは売上高7800億円、営業利益70億円、純損失190億円としていたが、「修正幅については検討中で、悲観的に見れば営業赤字となる可能性もゼロではない」(関係者)という。

 従来、業績不振の元凶は、プラズマテレビ事業だった。そのため抜本的な事業構造の見直しに着手。4月に、プラズマパネル生産からの撤退を決め、パネルをパナソニックから調達することにした。

 これに伴い、パネルを生産していた3工場(山梨、静岡、鹿児島)は閉鎖、もしくは機能転換され、工場要員約1400人の大部分については、配置換えか希望退職の措置が取られることが決まっていた。工場の撤退損や人員削減コスト等の構造改革費用は、通期見通しに含まれている。

 当初見込んでいた営業利益70億円の内訳を見ると、(プラズマテレビを含む)家電機器事業は営業損失150億円、車載機器事業は営業利益200億円、その他事業は営業利益20億円となっている。つまり、家電機器事業の赤字は、車載機器事業の黒字でカバーする算段だった。

 ところが、である。大黒柱である車載機器事業が、今期に入って失速。

 北米自動車市場の冷え込みにより、市販用カーナビゲーションの販売が悪化してしまったのだ。第1四半期時点で、車載機器事業の営業利益は17億円(前年同期は76億円)であり、通期見通しの営業利益200億円の到達はもはや絶望的な情勢だ。

 すでに業績の下方修正を株式市場は織り込んでいるのだろう。10月21日の終値は368円で、時価総額は773億円。2000年9月のピーク時と比較すると、企業価値は9割も下がっている計算だ。

 パイオニアは、昨年12月20日にシャープと資本提携を結んだが、14.28%の株式を保有したシャープの含み損は305億円に達する。昨今の株式市場の急落により、他の電機メーカーの株価も軒並み値を下げているとはいえ、PBR(株価純資産倍率)0.3倍という評価は、会社の解散価値を大幅に下回る。

 それだけではない。11年3月には、609億円もの社債の償還期限がやってくる。この社債は、04年にNECからプラズマパネル生産工場を買収した際に発行されたものだ。皮肉にも、撤退を決めたばかりの工場の買収資金に今頃苦しめられることになりそうだ。パイオニアのネットキャッシュは、530億円のマイナスであり、資金繰りが安泰ともいえない。

 構造改革の途上で、「車載」と「社債」の二重苦に見舞われている。
 
(『週刊ダイヤモンド』編集部 浅島亮子 )