コンサルタントは「裸の王様」についたスタイリストのようなものだ。年金関係者向けの講演で、そう言ってみた。
有能であっても、不愉快なコンサルタントを顧客は嫌う。成功している高名なコンサルタントには、一見鋭そうだが実際は目上から見て愛嬌のある男芸者タイプの人物が多いように思う。正しくとも、顧客にとって受け入れがたいことをゴールにしてはいけない。
また、コンサルタントは最終的な回答をすぐに教えてはいけない。理想は、顧客が徐々に成長し、やがてコンサルタントに依存するようになる状況だ。問題をすっきり解決し過ぎると、仕事を失う。
運用に関するコンサルティングは、本音で言うと、答えを先に言って理由を明晰に説明すれば、ものの一時間もあれば問題が解決するようなものが少なくない。資産配分と運用会社の選択程度の課題ならそれで十分だ。しかし、コンサルタント(個人に対してはファイナンシャルプランナー)の商売としては、それではまったく不十分だから、あれやこれやと手続きをつくり、答えを小出しにする。
また、自らを権威づけして、相手にとって不可欠なものにすることを試みる場合もある。
たとえば、ファンドのマーケティングをしている人の話を聞くと、基金の担当者に対してファンドの売り込みが成功しかけると「では、うちが使っているコンサルを説得してください」と言われることがあるという。基金側では、コンサルタントのお墨付きを得たファンド(運用会社)であるということを一種のリスクヘッジ(失敗した場合の言い訳)として使うことがある。コンサルタントから見れば、自分を権威づけるとともに相手の仕事のプロセスに食い込むことに成功した例である。