「水道水が飲めるのは、世界でたった9か国」日本以外だと、どこが飲める?
「経済とは、土地と資源の奪い合いである」
ロシアによるウクライナ侵攻、台湾有事、そしてトランプ大統領再選。激動する世界情勢を生き抜くヒントは「地理」にあります。地理とは、地形や気候といった自然環境を学ぶだけの学問ではありません。農業や工業、貿易、流通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問なのです。
本連載は、「地理」というレンズを通して、世界の「今」と「未来」を解説するものです。経済ニュースや国際情勢の理解が深まり、現代社会を読み解く基礎教養も身につきます。著者は代々木ゼミナールの地理講師の宮路秀作氏。「東大地理」「共通テスト地理探究」など、代ゼミで開講されるすべての地理講座を担当する「代ゼミの地理の顔」。近刊『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』の著者でもある。

「水道水がそのまま飲める」って実はすごい
地球上には約14億㎦もの水が存在しますが、そのうち97.5%は海水です。残りは陸水が2.5%と、わずかな水蒸気(全地球の水の0.001%未満)です。その2.5%の陸水を分類すると、氷雪・氷河が68.7%、地下水が30.1%、地表水が2.2%です。氷雪・氷河の大部分は南極とグリーンランドにありますから、生活水には利用できません。ちなみに、グリーンランドはデンマークの自治領です。
20世紀は自動車や航空機が登場したことにより、石油を巡る争いが絶えませんでした。まさしく
20世紀は「石油の世紀」でした。しかし21世紀は「水の世紀」です。世界の大河川では、上流での水需要が多くなり、下流で水が枯渇し始めるなど、水の利用を巡って争いが起きています。
水道水がそのまま飲めるのは、世界で9カ国しかない
国土交通省によれば、「国土全体において水道水を安全に飲める国」は世界に9カ国しかありません。フィンランド、スウェーデン、アイスランド、オーストリア、ノルウェー、デンマーク、オランダ、ニュージーランド、日本です。日本は、水道水がそのまま飲める数少ない国の1つなのです。
日本は、ユーラシア大陸の東に位置しているため偏西風の影響が弱く、モンスーンの影響が強い国です。そのため年間降水量は世界平均の2倍以上です。また島国であるため、隣国と水資源を巡る争いは基本的に存在しません。
日本は水資源が豊富な国なのです。日本人は「水と安全はタダ」と当たり前に思っていますが、世界の多くの国ではそうではありません。日本列島が自然から与えられた「土台」なのであり、これは感謝すべきことといえるでしょう。
(本原稿は『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』を一部抜粋・編集したものです)