これは、個別多様な介護ニーズに対応しようとすると、いくら財源があっても足りないからだ。

 病気やケガの治療は、疫学データに基づいておおまかな治療内容が決められるし、治れば治療は終わる。だが、介護はそうはいかない。

 同じ要介護度の人でも、「家族がいるのかいないのか」「どのような家に住んでいるのか」「どのような介護を希望するのか」などによって、介護ニーズは異なる。また、リハビリなどで症状が改善することはあっても、いったん介護を受ける状態になると、多くの場合はサービスを使い続けることになる。

 線引きの難しい介護ニーズを、公的な介護保険だけで賄うのは難しいため、制度ができた当初から、ケアプランのなかに介護保険を使ったサービスだけではなく、その他のサービスを併用することが認められている。

 例えば、利用限度額を超えて介護サービスを利用したり、サービス時間を延長する「上乗せサービス」、介護保険の対象となっていない配食や緊急通報などの「横出しサービス」などが認められている。

 費用面でも、健康保険で混合診療を受けたときのようなペナルティーはない。保険外の介護サービスを利用した場合、決められた要介護度の上額を超えた部分は全額自己負担になるが、介護保険を使って利用した部分は、通常通りに1~2割を負担すればいい。

 健康保険に比べると、介護保険はずいぶんと柔軟な制度といえるのだ。

 今回、「混合介護」という言葉が前面に押し出されたため、介護も保険内サービスと保険外サービスの併用が規制されているという印象を受けた人もいるかもしれない。だが、実態としては、今回の公正取引員会の提案は目新しいものではなく、瑣末な問題を取り上げているに過ぎない。

 介護が必要な人の暮らしの質を上げ、多種多様な介護ニーズを満たすために、さまざまな社会資源を利用することは悪いことではないし、むしろ歓迎すべきことだと思う。

 だが、現状では、実費を払って保険外の介護サービスを利用する人は少ない。その理由は、公取委の報告書で示したように、「規制」が最大の問題なのか。

 次回は、報告書であげられている「規制」の内容を紹介しつつ、保険外サービスが広がらない理由を考えてみたい。

参考文献/「介護保険情報」2016年11月号 論壇「混合介護」を巡る幻想~ケアマネ報酬の見直しが不可欠 東京財団研究員兼政策プロデューサー 三原岳