成長するアジアに近い
ロケーション

 地理的優位性を語るときに外せないのは、経済成長著しいアジアマーケットに近いというロケーションである。北九州市を基点にすると、東京と中国・上海は約1000キロメートルの等距離にあり、韓国・釜山は大阪よりも近くなる。さらに「地理的に近いだけでなく、本市は長年にわたる環境面での国際協力で、アジアの各都市と信頼関係を築いているのが大きな強み。日本の自治体の中で一番フレンドリーなネットワークを構築していると自負しています」と北橋市長は胸を張る。

環境姉妹都市スラバヤ市における市民との交流

 北九州市は現在、アジアを中心に環境に関する技術やノウハウを総合的に移転する「グリーンシティの輸出」を進めており、この分野では自治体のトップランナーだ。立地企業の海外展開の支援にも積極的で、アジア市場をにらむ拠点としては好適なロケーションにある。瀬戸内海と日本海側に面したコンテナターミナルなどの港湾施設、24時間運用可能な北九州空港に加え、2016年春には東九州自動車道が全線開通予定。「政令指定都市で一番安価で豊富な工業用水を供給」(北橋市長)など、産業インフラも見逃せない。

人材と産業の集積が
企業活動の可能性を広げる

 北九州市にはまた、官営八幡製鐵所時代からの“モノづくり”の伝統があり、理系の大学・大学院をはじめ高専や工業高校が多く、即戦力となり得る「理系人材」を安定的に供給できるという利点がある。通勤圏人口は約200万人、「あるNPO法人が実施した“子育てしやすい都市ランキング”では政令指定都市で第1位になるなど、女性が働きやすい都市であり、離職率が低いのも特長です」と北橋市長は明かす。

 製鐵所を中心に日本の近代化を支えた技術力は健在で、特に中小企業では職人的な技術力を持つマイスターたちが活躍している。市では率先してこうした技術力を生かす産業振興を図っており、例えば北九州地域の自動車部品企業のネットワーク(略称:パーツネット北九州)を立ち上げたときは、「自動車メーカーとの展示商談会や、取引拡大セミナーなどを開催して、事業の拡大を促進。その結果、北部九州地域に集積している自動車メーカーや部品メーカーからの受注が拡大した」(北橋市長)という実績を持つ。

 産業の集積と行政の支援が、立地企業のビジネスの可能性を広げている。

多様なチャレンジを
後押しする風土

 北九州市郊外の丘陵地帯には、知的基盤として理工系大学や研究機関が集積する「北九州学術研究都市」があり、産学連携が活発に行われている。「本市は公害克服のために、市民・企業・行政が一丸となって取り組んだ経験があり、青い空と海を取り戻した誇りが、多様なチャレンジを後押しする風土につながっているのです」と北橋市長は説明する。

 多様な分野で、企業の事業継続性に大きなポテンシャルを持つ北九州市。進出企業に関しては、地場産業を含めて経済の活性化を促す同市の「企業立地支援課」がワンストップでバックアップを行う。

 「新たなビジネスの展開の際には、ぜひ北九州市進出を検討いただきたい」と言う北橋市長。その言葉には、“値打ちある都市”の自信と力強さが込められている。