「空室になりづらい部屋」を
見つけるときの視点とは…?

生形 上原さんはアパートや戸建投資もやっていますが、物件を買う時はどんな基準で?

上原 とにかく長く借りてもらえる物件を買います。たとえばある戸建は、施設を運営するNPO法人に貸しています。もともと、そのNPO法人の事業には補助金が下りると聞いていたんです。そこで、いくらの家賃なら補助金の範囲でまかなえるのかを聞いて、その金額よりも少し安く貸せるような戸建を見つけて、購入・リフォームして貸しに出しました。

生形 まず入居者を見つけてから物件を探したの? ふつうは逆ですよね? それはすごい…。

上原 ええ、大変なんですけど、でもそうするとなかなか退去しないんです。一旦借りてもらったらずっと住んでもらえます。

生形 なるほど。

上原 ほかには変わったところでは、戸建を購入したのですが、その持ち主が、住宅ローンが払えなくなり、任意売却で売りに出したものでした。私はそれを買い、住宅ローンの支払いよりも少し安い家賃に設定して、以前の持ち主にそのまま借りてもらうことにしました。
 長年住み慣れた家で愛着もあるはずですし、引っ越しも大変だし、きっとめったなことでは退去しないだろうと踏んだのです。その結果、長く借りていただいています。

生形 ローンの支払いよりも返済額が低いとはいっても、滞納とか心配ではなかったですか?

上原 それは、ほかの人にも言われましたが(笑)、保証会社に入ってもらうとか、やりようはあるんですよ。

生形 不動産投資ブームの一方で空室が増えていますから、一度空室になると埋めるのは大変ですよね。まず入居者ニーズの見込める物件を探すという視点は大事ですね。

賃貸経営はサービス業。相手の立場に立てばうまくいく

上原 生形さんの本にも、「Airbnb(民泊のこと。詳しくは第8回を参照)がわからなければ、まず1回利用してみて」とありました。どんなビジネスでも、まずお客さんの立場に立ってみるということが大切だと思います。

生形 賃貸経営においては本当に入居者目線が大事。たとえば以前、私が持っている地方のアパートで、一部屋だけなかなか埋まらなかったことがあります。でも問題がどこにあるかわからない。そこで新幹線を使って現地に行ってみました。

 現地を見て、ベランダのすぐ目の前、それも同じ高さの視線の先に、お隣の窓があったことがわかりました。あれでは内見にきた女性は嫌がります。そこで、すぐに外から見えなくなるミラーレースカーテンを買いに行って取り付けたところ、すぐに入居者が決まりました。

上原 行ってみないとわからないことは案外、多いですね。

生形 そうです。他の一棟マンションでは、3、4、5階の同じ位置にある部屋だけ入居者が決まらない。現地を見てわかったのは、その間取りの部屋だけリビングに大きな柱が出っ張っていた。それで家具の配置がイメージしづらかったんです。

 その時は家具の配置をイメージしやすいように、イケアでソファやテーブルなどを買ってきてモデルルームをつくりました(下記写真)。そうしたら短期間で入居者が決まりました。

出っ張っている柱を逆に利用して、ベッドとソファをわけたモデルルームを作成

上原 モデルルームの家具もそうですが、壁のクロスなどもセンスがいいですね。私もカラークロスを使うことはありますが、生形さんのような柄物はなかなか……。

生形 ターゲットに合っていればいいんです。あるアパートは、地方でクルマ社会なのに駐車場が少ないという物件でしたが、かなり冒険した柄のクロスを使い、キッチンもオレンジや紫などのド派手な色にしたところ、即効で決まりました。奇抜な内装にするとターゲットを狭めてしまいますが、逆に「絶対にこの部屋がいい!」という人が現れるんです。

上原 万人受けするものよりも、ターゲットを絞った方が選ばれやすいと。その方が仲介業者さんも案内しやすいかもしれませんね。

生形 空室が6室あるアパートを買った時は、6部屋をそれぞれまるで違う内装にしました。それで人気の高い部屋がわかったら、次からはそのタイプと同じ部屋をつくっていきました。

上原 いろいろやっているんですね。

生形 賃貸経営はもはやサービス業だと思っています。家賃よりも高い価値を感じられる空間を提供できるかが勝負。それくらいやらなければ生き残っていけません。

(続く)

生形大(うぶかた・だい)
1977年生まれ、富山県富山市出身。横浜国立大学大学院修了後、外資系証券(バークレイズ証券・JPモルガン証券)出身の投資家。国内12棟189戸、海外3戸、都内の戸建て・区分マンション4戸の不動産を所有。不動産以外にも株・FX・先物・オプション取引・オフショアファンドなどあらゆる金融商品に精通し、現在は資産運用の専門家として独立、アドバイスなどを行っている。
上原ちづる(うえはら・ちづる)
スッチー大家。元キャビンアテンダントで、ANA時代に学んだコミュニケーション術や経験をベースに不動産投資を開始。現在、3棟28戸、戸建て賃貸3戸、コインパーキングなどを運営し「雑食不動産投資」を実践中。そのほか人材派遣業などもはじめ、3人の子持ちながら、ママ経営者として忙しい日々を送っている。