
円安を背景に訪日外国人客の“爆買い”で沸く百貨店業界。2021年度は新型コロナウイルスの感染拡大で軒並み業績が悪化したが24年度は過去最高益を更新するなど見事V字回復を果たした。特集『25年 給料ランキング』の本稿では、主要百貨店5社の年収推移を大公開し、給料から見た業界内序列について明らかにする。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
訪日客バブルに沸く百貨店各社
高島屋新宿店は売上高初の1000億円超え
高島屋新宿店の2025年2月期の売上高は前期比13.5%増となり、初めて1000億円を突破した。売上高1000億円を超えるのは、売上高順に大阪店、日本橋店、横浜店、京都店に次ぐ5店舗目となる。新宿店の奮闘もあり、高島屋の25年2月期の連結売上高は同6.9%増の4984億円で、3期連続で過去最高を更新した。
高島屋新宿店は1996年10月に開業。新宿駅南口に位置し、地下1~11階で売り場を展開している。これまでは近隣にある伊勢丹新宿店に顧客を奪われ、19年2月期の売上高は748億円と、単店で最も売り上げ規模の大きい大阪店の半分ほどにとどまっていた。
なぜ、こうした逆境を乗り越えて大きく成長することができたのか。大きな理由は訪日外国人の存在だ。円安を背景に、2020年2月期に約100億円程度だった免税売上高が25年2月期には約200億円に倍増。店舗の売上高の2割のシェアを占めるまでになった。
日本人の購買も増えた。21年ごろから化粧品売り場やゴルフ用品売り場の改装を進めたほか、22年10月に新宿の競合店であった小田急百貨店が再開発に伴い売り場を縮小したことも追い風となったようだ。
もちろん訪日客の恩恵を受けているのは高島屋だけではない。伊勢丹新宿店を傘下に置く三越伊勢丹ホールディングス(HD)は、25年3月期の営業利益が2期連続で過去最高を更新。大丸松坂屋や高級商業施設「GINZA SIX」を運営するJ.フロントリテイリングは、訪日客に強い大丸心斎橋店や大丸札幌店の販売が好調で増収増益だった。
では、好業績はどれだけ従業員の給料に還元されたのだろうか。次ページでは、上場する主要百貨店5社の給料の推移を比較するとともに、新型コロナの感染拡大期からどれくらい給料がアップしたのかを明らかにする。業界でトップとなったのは意外にもあの企業となった。