人間は人工知能(AI)に仕事を奪われてしまうのではないか――。その問いは、テクノロジーの進化が引き起こした論争におけるメインテーマの一つだ。ただ、AIの影に隠れて目立たないが、実はすでに現実のオフィスで、人間に取って代わる存在が台頭しつつある。それは、ロボット。それも、姿なきソフトウェアロボットだ。私たちはその存在とどう向き合うべきか、真剣に考えなくてはいけない時代が訪れている。(週刊ダイヤモンド編集部 鈴木崇久)
銀行業界に「大リストラ時代」が再び訪れる――。この1~2週間、メディアの報道の中でそうした見出しが何度も踊った。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGの3メガバンクグループは今後、大規模な店舗の統廃合や人員・業務のスリム化に取り組み、コスト構造改革に本腰を入れる。その結果、三菱UFJFGで9500人、三井住友FGで4000人、みずほFGで1万9000人、3社合計で3万2500人もの人員を浮かせる算段だ。
ただ、3社がこれから取り組もうとしている「大リストラ」には、多くの場合につきものであるはずの早期退職募集などといった人員削減の話が出てこない。せいぜい大量に採用されたバブル入行組の退職と今後の新規採用の抑制によって、人員の自然減を進める程度にすぎない。実は、3社合計で3万2500人分に相当する「業務の削減」は行うものの、それで浮いた人員は営業など別の部門に回すことを想定しているのだ。
そして、その浮かせた人員が今までやっていた仕事を代わりにこなすのは、ロボットだ。しかし、私たちがイメージしがちな人型ロボットでも、工場で溶接や組み立てなどを行う産業用ロボットでもない。RPA(Robotic Process Automation)と呼ばれる、ホワイトカラー職の業務をソフトウェア内で自動処理する「姿なきロボット」なのだ。