(1)先進国の金融政策の転換

 景気の話は「株価」で考えると分かりやすい。「株式」は景気指標であり、半年後の状況を先取りするといわれている。今回の世界の株価の長期的上昇は、2008年のリーマンショックへの対応で始まった先進国(日米欧)の量的金融緩和がその原動力となった。あふれるマネーが金融市場に流れ込んで、株式も債券も価格を上げた。通常、景気拡大期における金融市場の動きでは、株価が上昇、債券価格は下落(金利は上昇)する。しかし、金融緩和マネーによる上昇は、全ての金融商品の価格を上げる。今回もそれに当たる。

 2017年も世界の株式の時価総額は約2割増加した。インド、南アフリカ、アルゼンチンなど新興国はもちろん、先進国でも、米国、英国、ドイツなどが最高値を更新した。日米欧では中央銀行の保有している資産(=金融緩和資金量)は10年前の約4倍弱で、米国以外の先進主要国の政策金利はマイナスになっている。

 景気回復・物価上昇に伴い先進国は金融政策の転換を始めている。米国の中央銀行FRBは昨年3回利上げを実施し、10月には資産の縮小も開始した。欧州のECBはこの1月より資産購入を縮小した。日本銀行は政策目標としている金利は維持しつつも買い入れ資産を縮小しており、ステルステーパリングといわれている。

 基本的に景気は“波”である。良いときもあれば、悪いときもある。中央銀行は景気が悪いときには政策金利を引き下げることが求められる。そのために、経済が平時に戻った時には、金利をある程度の水準まで上げることが必須なのだ。現在のような低金利・マイナス金利では、これ以上の引き下げ余地はほとんどない。逆に低すぎる金利は金融機関の経営を悪化させるなどして、金融政策の効果を低下させる「リバーサルレート」の状況になり、副作用が強くなる。

(2)中国経済の成長低下

 さらに世界経済に影響を与える大きな懸念材料として、中国経済がある。5年に一度の共産党大会を昨年10月に行い、習近平は政権基盤を堅固なものにした。大会を円滑に行うため、これまでは成長・安定重視の経済政策を実施してきたが、その必要もなくなり、無理をした政策から軟着陸へ向けて進んでいる。しかし、この軟着陸も景気を調整しながら行うのはかなりの難事業だ。国家・企業・家計で債務が拡大してきたが、その金融の締め付け(金融リスクの防止)は重要課題の一つで、中央経済工作会議で融資の伸びを圧縮することになった。つまり方向としては、先進国が始めた金融の引き締めと一致する。実際、共産党大会の後、上海株は規制が多いとはいいながらも、軟調になっている。

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新興国から先進国への資金の逆流

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