トランプ次の経済政策は「原油戦略」だ

 米トランプ大統領は、相変わらず“トランプらしい”政治を行っている。お父様がドイツ人1世のトランプの強引な政策に、鉄血宰相ビスマルクの力強さがだぶるのは私だけだろうか。彼が次にやろうとしているのは、米国の原油の“産出”と“輸出”の増加による国力アップだ。ビスマルクに倣えば、“石”血政策ともいえるものである。以下にその6つのポイントを整理してみよう。

1.産出量の拡大

 米国の原油産出量は、かつては世界一であった。その後、油田の産出量が減り始め、中東を始め他国の産出量が増加し始めて逆転されている。現在、原油価格の世界指標となっている「WTI」はWest Texas Intermediateの略で、主産地であった西テキサスの中質の原油を表し、当時の名残といえる。近代的な原油採掘が始まったのがこの地であり(ちなみにブッシュ大統領親子の故郷もこの辺だ)、現在もシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループ傘下のニューヨーク・マーカンタイル取引所で活発に取引されている。

 その後、技術が進歩して、シェールオイルが採掘可能になった。地下深くの頁岩の層に含まれている石油の一種で、高圧の水で粉砕し採取する。環境を重視するオバマ大統領の時代にはなかなか認可されなかったが、開発重視型政策を優先するトランプ大統領になって認可が相次ぎ、増産されている。米国は現在、サウジアラビア、ロシアを抜いて世界1位の原油産出量を誇る。

 米国のエクソンモービルを始めとする、旧セブンシスターズと呼ばれた石油メジャーも米国内産の原油営業体制にシフトを変えている。要は米国自体が資源国としての地位を固めたのである。

 実は、かつて米国産原油は、産出量が少ないこともり、国家安全保障の目的で輸出が禁じられていた。それがシェールオイルの増産、生産量の拡大によって、戦略的輸出商品として生まれ変わったのである。