「脱・金融緩和」、北朝鮮情勢で為替はどう動くか
今回は経営者が2018年に注目すべきテーマを「為替」「景気」「最新技術」に分けて取り上げます。
まず為替相場は不透明感が強く、専門家も円高説と円安説に分かれています。ただどちらの見方にもうなずける点があります。
円高説派は根拠として、日銀が「脱・金融緩和」に方向転換し、量的金融緩和を縮小し(「テーパリング」を始め)、現状年80兆円の国債などの買い入れ金額を縮小する可能性があるということです。そうなれば、金利上昇圧力となります。
小宮コンサルタンツ代表
また、もうひとつ円高の理由として海外との総合的な取引状況を示す経常収支の黒字幅が安定して拡大していることを挙げています。2016年度の黒字幅は過去3番目に大きい20兆円でした。2017年度も同程度の水準を維持しており、経常黒字国の通貨は通貨高に振れやすくなります。
しかし私は円安説をとっています。日銀が脱・金融緩和に転換する可能性はかなりあると考えていますが、その場合でも日本の金利上昇速度が、景気拡大が順調で、金利の引き上げが始まっている米国には追いつかず、日米の金利差が今以上に拡大して、円安圧力となる可能性が高いと考えています。
また、為替相場の見通しが不透明な大きな要因に北朝鮮情勢があります。日本は当事国なので、北朝鮮と米国の開戦機運が高まれば、本来なら、円が売れらると考えるのが普通なのですが、なぜ北朝鮮情勢が緊迫化すれば円高になると言われているのでしょうか。
それは、日本の生命保険会社などの機関投資家が、為替変動リスクを避けるため、海外の資産を売って国内運用に切り替えると考えられることです。それは外貨を売って円貨を買うことになるため、円高要因になり得ます。その流れに乗る投機筋もいるのです。
もちろん、北朝鮮情勢は日本の社会、政治はもちろん、景気にも大きな影響を与えます。米朝開戦の確率について、さまざまな見方がありますが、外交に精通しているある専門家は、開戦の確率は15%と見ており、北朝鮮から戦争を仕掛けることはまずないと分析しています。北朝鮮の最大の目的は金正恩体制の維持ですが、米国と戦争を始めれば確実に負けて体制維持は不可能となるからです。