今回は、「ECB勝利宣言後のユーロ見通し」について考えてみたいと思います。
結論的にいうと、ユーロは改めて売られ過ぎ修正が試されると思いますが、それは最終的にユーロ高の限界を確認する始まりではないでしょうか?
最後に少し、米ドル/円を考える関連事項として、なぜQE3(量的緩和第3弾)をやらないかについても説明します。
ドラギECB総裁、勝利宣言!
3月8日(木)の記者会見で、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は、欧州債務危機との戦いでECBは十分な役割を果たし終えたといった認識を表明しました。
欧州債務危機の最悪期終了宣言と言えるかもしれません。
確かにそれは、客観的な数字からもある程度確認できると思います。
イタリアの金利は、マーケットにおいて「金融市場のストレスの代理変数」と位置付けられているようです。そんなイタリアの長期金利(10年債利回り)は、先週(2月27日~)から、ついに2011年8月以来の5%を大きく割れる動きとなってきました。
確かに、欧州債務不安が再燃し、金融市場のストレスが急拡大する以前の状態へと戻ってきたわけです(「資料1」参照)。
欧州債務不安は、ギリシャなど一部の国に依然として不安定なところはありますが、「ストレスの代理変数」であるイタリアの金利を見る限り、かなり落ち着き、「危機前」に戻ったわけです。
通説に誤り? QE実施なしで
欧州債務不安は落ち着いた
ではなぜ、欧州債務不安は落ち着いてきたのでしょうか?
一般的には、欧州債務不安が落ち着くためには、「抜本的対策」が不可欠と言われてきました。
その「抜本的対策」とは、ECBが直接国債を本格的に購入する、QE(量的緩和)を想定しているのが基本だったようです。
しかし、ECBはこれまでのところQEを実施していません。その意味では「抜本的対策」はとられていないのに、欧州債務不安は落ち着いてきたわけです。
ということは、通説に何か間違いがあったのでしょうか?
債務危機を落ち着かせた
主役の1つは「サルコジ取引」
欧州債務危機の中で、FRB(米連邦準備制度理事会)のようなQEを期待されることに対し、ECBがそれを拒否し、流動性対策を続けた理由として、「欧米の金融システムの違い」を指摘する声が、欧州専門家の一部にありました。
それは、このコラムでも何度か紹介してきたことです。
要するに、直接金融の英・米、つまり「アングロサクソン流」と、間接金融の欧州流の違いということです。
間接金融の欧州流では、流動性対策を受けた銀行が国債購入を拡大するかどうかが問われるところであり、直接金融の英・米の、中央銀行が直接国債購入に動くシステムとは、そもそも違うということです。
「ストレスの代理変数」であるイタリア金利が大幅低下した裏で、イタリアの銀行による国債購入が急増していた影響が大きかったことが最近になって再確認されてきました。
ECBのオペ資金を利用して、銀行が国債を購入することを「サルコジ取引」と呼ぶようですが、それが欧州債務危機を落ち着かせた主役の1つだったわけです。
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