現役世代をむしばむ
「死者による支配」
高齢者が望むように、たとえ若年層向けの施策を拡大しなかったとしても、高齢者向けの施策に切り込まなければ、米国財政は健全性を保てない。そこでカギを握るのは、若年層の動向だ。
米国では若年層が使い道を決められる財源が少なくなりつつある。公的年金や医療保険は、過去に決められた制度に従って、毎年の歳出額が自動的に決まっていて、債務に伴う利払い費も同様だ。
言い換えれば、これらは過去の世代が使い道を決めてしまっているわけであり、国防費や教育費など、現役世代が使い道を左右できるのは、これらを税収から差し引いた残りの部分に限られる。冒頭で取り上げた歳出法についても、若年層が使い道を決められるのは、こうした残りの部分だけである。
70年代の米国では、過去の世代の決定に左右される歳出の規模は、税収の4割程度で、残りの6割は、現役世代が使途を決められた。ところが、その割合は低下を続けており、2010年代には2割程度になってしまった。
このままだと、2030年前後には、全ての税収の使い道が過去の世代によって決められた状態になる。研究者のあいだでは、こうした米国財政の状況を、「死者による支配(Dead Men Ruling)」と呼ぶ向きがあるほどだ。
米国では、長らく「若年層の反乱」は起こらないといわれてきた。ミレニアル世代には政府の役割を前向きに評価する傾向があり、「大きな政府」への親近感が強い。高齢者に対する尊敬の念が強いともいわれており、50歳以上を対象とした非営利団体であるAARPは、その機関誌に「世代間の闘争は起こり得ない」といった趣旨の記事を掲載したこともある。



