「先生ならどうしますか?」

後閑:医療者と患者さんやご家族には、その思いにギャップがあるんですよね。治療方針を決定する上で、中山先生自身が気をつけていることはありますか?

中山:基本的には、その場で決めないということかな。緊急手術の場合以外は、必ず一週間は開けて、一回持ち帰ってもらって、ご本人に家族と一緒に考えてもらうことにしています。それで改めて集まってもらって話し合う、ということを大事にしていますね。

後閑:中山先生の本『医者の本音』の中で、大腸がんの父親の手術をするのか、人工肛門にするのか、それとも何もしないのかを悩んで、手術を選択したというエピソードがありましたが、このケースも持ち帰って考えてもらったんですか?

中山:あの話に関しては、もう腸閉塞になっていて、放っておけば腸が腐って死ぬという状態だったので、大急ぎでみんなで話して決めました。
最近は風潮として、患者さんに選択を完全に丸投げするという姿勢がちょっと多いように思います。
ABCと選択肢があります、どれがいいですか? というシーンがちらほらあって、安易すぎてプロとして非常に恥ずかしい。やはりある程度、プロとして責任を持ちつつ、自分の医学的な専門性を加味して、さらに経験を加え、せめてオススメを言うべきだと思っています。僕はそれだけは気をつけるようにしています。全部並列して提示して、さあ、どれかに決めてくださいというのは、僕は好きじゃない。

後閑:たしかに、A案B案C案ありますけど、どうですか? と投げて、家族がA案を選択したとすると、面談の後で、「なんであれ選ぶかな?」と口にする先生もいますね。いやいや、先生が提示したからでしょう? みたいなこともあるから怖いんです。私も医者がせめてオススメを言うべきだと思います。
逆に、「先生だったら何をオススメしますか」と聞ていみてもいいものでしょうか?

中山:そうですね、それは有効だと思っています。
「先生だったら何を選びますか」「先生が私の立場だったら何を選びますか」と聞いてみるのは、すごく大事です。最終的には主治医の判断になるわけですが、私は、この患者さんが自分の親だったとしたら何を選ぶだろうかというように意思決定すると、比較的すっきりとする選択ができるようには思っています。

後閑:私の親も肺がんの手術の後に「抗がん剤をしますか」と聞かれて、「先生だったらどうしますか」って聞いたら、「僕ならしません」と言われてやめました。

中山:その質問は、本当に有効だと思います。

静かに尊厳を持ってその生を閉じていく

後閑:中山先生は本の中で、「静かに尊厳を持ってその生を閉じていく姿はとても自然なものだったと記憶しています」と書かれていましたが、その時はどう思われたんですか?

中山:その話は、私が初めて治療をしなかった患者さんのことです。