人は自分の死を自覚した時、あるいは死ぬ時に何を思うのか。そして家族は、それにどう対処するのが最善なのか。
医療現場で患者さんとその家族に関わってきた看護師の後閑愛実さんが綴った『後悔しない死の迎え方』は、家族など身近な人の死や自分自身の死を意識した時に、それから死の瞬間までを後悔せずに生きるために知っておいてほしいことを伝える一冊です。
「死」は誰にでも訪れるものなのに、日ごろ語られることはあまりありません。そのせいか、いざ死と向き合わざるを得ない時となって、どうすればいいかわからず、うろたえてしまう人が多いのでしょう。
医療現場で実際にあった、さまざまな人の多様な死との向き合い方を知ることで、自分なら死にどう向き合おうかと考える機会にしてみてはいかがでしょうか。(こちらは2019年1月5日付け記事を再掲載したものです)(初出時より再構成しました)

1000人の看取りに接した看護師が伝える、人は「死に時」を自分で選んでいる、と思う訳【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

人は「死に時」を選んでいる

1000人の看取りに接した看護師が伝える、人は「死に時」を自分で選んでいる、と思う訳【書籍オンライン編集部セレクション】
後閑愛実(ごかん・めぐみ)
正看護師。BLS(一次救命処置)インストラクター。看取りコミュニケーター
看護師だった母親の影響を受け、幼少時より看護師を目指す。2002年、群馬パース看護短期大学卒業、2003年より看護師として病院勤務を開始する。以来、1000人以上の患者と関わり、さまざまな看取りを経験する中で、どうしたら人は幸せな最期を迎えられるようになるのかを日々考えるようになる。看取ってきた患者から学んだことを生かして、「最期まで笑顔で生ききる生き方をサポートしたい」と2013年より看取りコミュニケーション講師として研修や講演活動を始める。また、穏やかな死のために突然死を防ぎたいという思いからBLSインストラクターの資格を取得後、啓発活動も始め、医療従事者を対象としたACLS講習の講師も務める。現在は病院に非常勤の看護師として勤務しながら、研修、講演、執筆などを行っている。<写真:松島和彦>

 たまにお見舞いに来ては、意識のないお母さんに文句を言っている息子さんがいました。

「お母さん、いつまで生きてるんだよ。お母さんの入院費のせいで、俺たちの生活大変なんだからね」

 私はそれを、「そんなことをよく言うな」と半分あきれながら聞いていました。

 ですが、その日は、息子さんのかける言葉がいつもと違いました。

 息子さんはお母さんに向かってこう言ったのです。

「母さん、わかったよ。俺たち頑張るから、もう好きなだけ生きていいよ」