習氏に過剰な期待、読み間違える
「張氏処刑」し“直言”得られず

 では、金正恩氏が18年春以降、急速に接近した中国との関係はどうだろうか。

 5月20日付の労働新聞は長文の論説で「最も警戒するのは、外部の援助なしには立ち上がれないという事大主義、敗北主義だ」と強調した。

 中国を名指ししたわけではないが、「事大主義」という言葉を使い、中国やロシアなどの大国を頼る姿勢を戒めるような論調が登場し始めている。

 金正恩氏は18年春以降、実に4回にわたって習近平中国国家主席と会談した。

 正恩氏は会談のたびに、習氏に対して「これから朝鮮と米国の間に起きることについて、中国が全面的に保証してほしい」と訴えた。

 習氏もこれに積極的に応じるかのような言葉を繰り返したという。だが、状況ははかばかしくない。

 中朝関係筋によれば、中朝国境地帯は最近、脱北者や密輸の取り締まりが厳しくなっている。国連決議によって、北朝鮮の海外派遣労働者は今年末までに北朝鮮に戻らなければならないが、中国政府は6月までに帰国させるよう各企業に指示した方針を依然変えていない。

 最近では、習氏が6月に大阪で開かれる主要20ヵ国・地域(G20)首脳会議の前後にソウルを訪問する可能性が浮上している。

 習氏は14年7月、中国の最高指導者としては史上初めて、それまで“恒例”だった平壌を訪問しないまま、ソウル訪問に踏み切った。このことが中朝関係の決定的悪化の原因になった。

 習氏が、正恩氏の重ねての訪朝要請にもかかわらず、韓国再訪問に踏み切れば、中朝関係は再び悪化の道をたどる可能性が高い。

 なぜ、金正恩氏は習氏の行動を見誤ったのか。

 韓国の多くの専門家が指摘するのが、中朝間で最もパイプを持っていた張成沢元国防副委員長の処刑による影響だ。

 張氏は過去、北朝鮮に投資する中国企業に便宜を図る一方、中朝国境地帯にある北朝鮮・新義州の開発で中国の協力を引き出すなど、中国との深い関係を築いた。

 だが、13年末に張氏が処刑されて以降、中国側の考えを正確に金正恩氏に伝えられる人物がいなくなった。張氏は中国の考えを正確に把握していたうえに、金正恩氏にとって都合の悪い話も直言できる立場にあった。

 張氏がいなくなったため、金正恩氏は習氏に過剰な期待を抱き、それが今の不満と不信につながっているという。