変局!岐路に立つNHK#8Photo:SANKEI

近年のNHKの歴史は政財界に翻弄されてきたといっても過言ではない。実際、直近の6人の会長は、いずれも外部から送り込まれてきており、プロパー会長は2008年に退任した橋本元一氏以来、存在しない。しかも、会長人事のみならず、受信料値下げなど重要施策が時の政権の意向に大きく左右されてきた。特集『変局!岐路に立つNHK』(全8回)の最終回では、同局の歴史をひもときつつ、悲願のプロパー会長の復活はあり得るのかを考察する。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)

なぜNHK会長人事で
外部人材の登用が続くのか

 多くの職員に惜しまれながら送り出される人もいれば、重苦しい雰囲気の中、送り出される人もいる。日本最大の放送局であるトップであるNHK会長は退任の日、東京・渋谷の放送センター4階のロビーから局を去るのが恒例となっている。しかし、見送りに来る職員の数や、その場の雰囲気は歴代の会長によって大きく異なるという。

 NHKにとって、会長人事は制作方針や経営を左右する最重要事項である。本特集『変局!岐路に立つNHK』でも詳報してきたように、会長を筆頭とする執行部の刷新によって、人事制度や制作方針は大きく変わる。会長人事によってNHKの経営の方向性が決まるのだ。

 そもそも、NHKそのものは会長の人事権を有していない。NHK会長を任命するのは、同局の最高意思決定機関である経営委員会である。12人の委員で構成される経営委員会の委員は衆参両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。そうした流れをたどるため、NHK会長の人事には時の政権の意向が反映されやすいといえる。

 近年のNHK会長の経歴を見ると、現会長の稲葉延雄氏まで直近の6人の会長は外部からの起用である。ただし、過去にはプロパー職員が会長を務めた例も珍しくない。

 今後、世帯数の減少とテレビ離れの加速で、受信料収入は先細っていく可能性が高い。さらに、ウェブ視聴に受信料を課す時代を迎える“転換点”において、職員の間からは“プロパー会長”の誕生を望む声が強くなっている。次のページでは、NHKの歴史をひもときながら、悲願のプロパー会長の復活はあり得るのかを考察する。