カスタマージャーニーの全ての段階で
顧客にとって価値ある体験を提供する

CXMを再定義する

──企業がCXを効果的に管理する手法として、アドビは「顧客体験管理(CXM)」を提唱しています。そのポイントについて、教えてください。

 企業は、良い製品やサービスを作るだけでなく、それを提供するプロセス全体を通して顧客の期待を満たすよう、組織やプロセス全体を管理しなければなりません。同時に、企業としてきちんと収益を上げる必要があります。その管理手法がCXMです。CXMの概念は以前から知られていましたが、アドビでは重要となる四つの要素を再定義しました。

 一つ目は「顧客が商品の提供プロセス全体を通じて体験する“カスタマージャーニー”を組織の基軸に据える」ことです。アドビ自身、かつて自社のビジネスをサブスクリプション(定額課金)モデルに転換する際、カスタマージャーニーを再定義し、それに対応できる組織へと大きく変革しました。顧客の行動をデジタルデータとして把握し、誰もがデータを使って意思決定できるようにしたのです。

 二つ目の要素は、「デジタルビジネスを効果的に運営する」ことです。顧客の期待に応えるには、それぞれの顧客について理解しなければなりません。デジタル技術を活用することで、顧客のあらゆる活動をデータ化できます(下の画像を参照)。そのデータを利用し、それぞれの顧客に向けてCXを最適化する、「パーソナライズの追求」が三つ目の要素です。

カスタマージャーニーの全ての段階で顧客にとって価値ある体験を提供するデジタル技術を活用することで、顧客のあらゆる活動をデータ化できる
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──例えば、顧客が実際に製品・サービスをどう利用し、どこに不満を感じているのかを把握して、日々の施策を改善していくわけですね。

 その通りです。そして、四つ目の要素として忘れてはならないのが、「顧客のプライバシーに最大限、配慮する」ことです。アドビの製品・サービスは、GDPR(EU一般データ保護規則)などの規制に従い、顧客のデータを要請に応じて即座に消去できる仕組みを用意しています。

 そのようにプライバシー保護を順守する仕組みがないと信頼関係が醸成されず、顧客は安心してデータを開示することができません。

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