税務環境のパラダイムシフトに対応するために
日本企業はマネジメントをどう見直すべきか

税務部門を戦略的な組織に
変革するには何が必要か

 グローバルな税務環境がパラダイムシフトを迎える中で、企業は税務マネジメントの見直しをどのようなプロセスで進めていくべきなのか。結城氏は組織の変革から着手すべきだとアドバイスする。

「既存の税務部門を戦略的な組織に変革していくには、経営層のリーダーシップが必要です。先ほど申し上げたように、多くの日本企業では税務の責任者は課長職級の方々が担っていますが、当該職で戦略的な組織変革まで主導することは事実上困難であるからです」

 税務部門の強化でもう1つ重要なのは適正な人材の配置だ。税務は基本的にスペシャリストの領域だけに、「これまでのジェネラリストを原則とした体制ではなく、少なくともメンバーの半数はスペシャリストを配置する必要があります。事業部経験があるジェネラリストも重要ですので、その育成を継続する一方、会計士や税理士としてプロフェッショナルファームなどでの専門的な経験を有するスペシャリストを外部からスカウトできるような組織体制、別体系の人事・給与制度をつくることも必要でしょう」と結城氏は付け加える。

 一方、日本企業の経営層でも税務マネジメント改革の必要性について意識する人は増えてきている。その理由の一つは、機関投資家からのプレッシャーだ。実効税率や税務部門の組織体制について、CEO(最高経営責任者)やCFOが機関投資家から説明を求められるケースが増えているのである。

 「グループ各社のCFOが国内外から集まるカンファレンスなどの場で、税務マネジメントの在り方について議論する機会が10年前に比べれば格段に増えました。また、クロスボーダーM&Aでビッド(入札)になったときに、競合先に入札額で大きく差を付けられたりするような場合、その原因の一つが戦略的税務であったりすると、それを機会に重要性を改めて認識することもあるようです」と結城氏は話す。

 では、税務部門のリーダーが今取り組むべきことは何か。「税務部門の現状を把握するとともに、税務の組織・機能や業務をどう変えていきたいのか、目指す姿を明確にすることが第一歩だと考えます」と森田氏。

 目指す姿と現状のギャップがはっきりすれば、短期的、中長期的なゴールを設定し、ゴールに至るロードマップを策定することができる。

デロイト トーマツ税理士法人
シニアマネジャー
森田理紗子氏

「目標の実現に向けて、いつ、誰を巻き込んで、どんなコミュニケーションを取りながら組織・機能や業務を見直していく必要があるのか。また、どんなテクノロジーを活用することが有効なのかといった課題を整理しながら、具体的なプランを立てることが重要です。そして、プランを立てた後は、その進捗、効果をモニタリングしながら必要に応じプランを見直すことも必要です」(森田氏)

 また、守りの税務から攻めの税務への転換も求められる。「言うまでもなく、税務のテクニカルなスキルはこれまで通り重要ですが、今後は事業部門の戦略的パートナーとして積極的にコミュニケーションを取ったり、税務組織の変革のためのプロジェクトをリードしたり、タックスプランニングに必要なデータ分析を行うといった、ソフトスキルも必要だと考えます」と森田氏は話す。

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