企業内での集団感染を
全力で警戒せよ

――この混乱は、いつまで続くのでしょうか。

 原因が感染症であるだけに、いつまで拡大期が続くのかという予想は、私たちにとっては非常に難しい。ただ、終わりは感染拡大の時期次第という前提の下に、最も懸念していることがあります。それは企業が操業を再開した後に、企業内で従業員の集団感染が起こるという事態です。これが連鎖的に起こった場合、サプライチェーンにとっての打撃は甚大です。

 現在、操業を再開した電機関連の企業に聞き取りをしています。ここまでのところは、サプライチェーン上の重要な企業において、深刻な集団感染が発生したという情報は入っていません。しかし小さい企業で、小規模に発生しているといった情報は複数あります。ですから油断はできません。

――アップルのサプライチェーン(本特集#2参照)が端的に物語っているように、電機のサプライチェーンは中国に大きく依存しています。今起こっている混乱は、中国に依存し過ぎていた結果でしょうか。そして新型肺炎の問題は、世界の工場としての中国の地位を揺るがすでしょうか。

 中国にサプライチェーンの相当部分が集中しているのは事実としてそうです。そして見通せる範囲の未来においても、電機産業において中国が世界の工場であり続けることは、基本的には変わりがありません。

 ただこれからは、中国の外に「セカンドソース」となる生産拠点を求める動きが活発になるでしょう。これは確実に起こることです。なぜなら企業経営の視点で見れば、新型肺炎の問題は本質としては、これまでに起こってきた一連の出来事に連なるものだからです。

 実は新型肺炎が起こる前から、中国に進出している外資メーカー、特に台湾の多くの企業は、中国から拠点を他の国に移転させていました。中国における近年の労務費の上昇が長期的な背景としてあります。そして何より打撃が大きかったのは米中貿易摩擦の影響です。2019年6月の対中関税の第1弾以降、一定程度の経営者が海外移転に着手していました。新型肺炎はこの流れに確実に拍車を掛けます。

 具体的な進出先としては、ベトナムやマレーシア、インドといった東南アジア、南アジアの国々が有望です。この動きを今後鮮明にしていくのは、鴻海精密工業や緯創資通(ウィストロン)といった、アップル製品を受託している台湾のEMS(電子機器受託製造サービス)です。

ベトナムのバクニンにあるサムスン電子の工場中国深セン市にある鴻海精密工業の工場。世界の工場としての中国のシンボル的存在だった Photo:Bloomberg/gettyimages

次のページ

いよいよチャイナ・プラス・ワンが起こる

TOP