台湾のEMSにとって
新型肺炎は政治リスク
――中国に依存した電機のサプライチェーンが、部分的に東南アジアに移転していく。この変化は高い確率で起こるとして、本格的には「いつ」起こりますか。来年にも起こるのか、それとも10年ぐらい先のことなのか……。
時期を左右するのは、台湾のEMSの動向です。鴻海、ウィストロン、仁宝電脳(コンパル、ノートパソコンの受託製造大手)、広達電脳(クアンタ、同)といったこれまで中国で大きな拠点を抱えてきた企業がどれぐらいの規模と速度で東南アジアに移転していくか。部品メーカーはそれを自社の拠点移転の判断基準にするでしょう。
こういった企業のコストは、雇用のコストで決まります。中国ほどスキルのある労働者が潤沢にいなくても、圧倒的にコストが安い東南アジアなら、事業展開は可能です。こういった労働集約的な企業の集積が進めば、現在中国から輸出している部材も、次第に現地化していきます。
――ここまで中国に深く根を張ってきた台湾企業が、東南アジアに打って出るでしょうか。
台湾企業にとっては、今回の新型肺炎問題はまさに政治リスクが顕在化する出来事でした。感染拡大を防止する目的で、中国の地方政府は次々と移動制限や都市封鎖の策を講じましたよね。そういった策の行き過ぎによって経済への打撃が懸念されるようになると、地方政府はまず台湾企業に操業再開を強く求めるようになりました。
例えば江蘇省崑山市は台湾企業が多数集積していますが、市政府は特に台湾企業に対して早期の操業再開と徹底した感染拡大の抑止を強く求めてきました。その内容は非常にコストがかかるものです。
従業員が職場に復帰したら、賃金倍増などの金銭的インセンティブを支払わなければいけない。その一方で、再開後に従業員の感染が確認されたら操業を再停止しなければならない。しかし従業員への賃金は払わなければならない。こういったことを地方政府は台湾企業に求めています。EMSのような業態は元々、利幅が薄い。そういった企業がここまでコストのかかる対応を求められたら、経営を続けられるでしょうか?
台湾企業はエレクトロニクス産業の重要な部分を担っています。彼らにとって新型肺炎は間違いなく、経営におけるターニングポイントです。
Key Visual by Noriyo Shinoda



