新型肺炎の打撃は今、中国から世界全域に広がりつつある。日本でも人の行動が緩やかに制限され始めた以上、サプライチェーンの断絶リスクはもはや「そこにある危機」。ソニーの元CFO、大根田伸行氏はリーマンショックの危機を乗り越えた金庫番。特集『断絶!電機サプライチェーン』(全8回)の最終回は、名金庫番の経験に学ぶ。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)
今から生産調整しても
効果は2~3カ月先
──世界の工場といわれている中国で、あらゆる製造業の生産ラインが停滞しています。新型肺炎の世界的な感染拡大で、需要の下振れも懸念されています。もし今、ソニーの財務トップだったら肝を冷やしますか。
一番の問題は感染がいつまで、どこまで拡大するのか分からないことです。3月期決算のところは、業績へのインパクトはもうどうしようもない。考え得る対策をやるしかない。
製造業的に今大事なのは、作り過ぎないことです。サプライチェーンが停滞して部品が集まらない、需要がかなり減りそうというなら、思い切った範囲の生産ボリュームにする。それを基に売上高を考える。そして無駄なお金を使わない。
トップライン(売り上げ)がどうのこうのというよりも、こういうときはボトムライン(損益)とキャッシュフローをちゃんとしなきゃいけません。売り上げが想定外に減っても、なんとか生き残れるようにする。それにはやたらにものを作らない、やたらに作って外に押し込まない。押し込んでその相手のお金が回らなくなったら、自社にも影響が及びます。
また製造業はサプライヤーに対して、部品などの買い入れのコミットメントを2~3カ月先までやっています。信用されている大手企業である以上、確約した製品はできる限り引き取らなきゃいけない。だからきちんと生産調整ができるのは2~3カ月先になります。