断絶!電機サプライチェーン#7
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新型肺炎により経済活動が半ば停止した中国。現地の日系企業はどのようにしてこの苦境に立ち向かっているのか? 特集『断絶!電機サプライチェーン』(全8回)の#7は、中国深センの日本人起業家、藤岡淳一氏による肺炎戦記の後編だ(本稿はダイヤモンド編集部特任アナリストの高口康太が、取材と藤岡氏の書面記録を基に同氏の手記として再構成した)。

操業再開の喜びもつかの間
従業員のほとんどが職場復帰不能

 私が中国深センで経営するEMS(電子機器受託製造サービス)企業、創世訊聯科技(深セン)有限公司。その生産ラインでは、普段は200人以上の従業員が働いている。しかし操業再開初日となった2月15日、ラインにいたのはたったの5人。外は気温20度を超える春の陽気。そのうららかな天気にそぐわず、がらんと寒々しい工場を見て私は凍り付いた。なぜ、こんなことになったのか──。

操業再開当初の創世訊聯科技(深セン)有限公司の生産ライン
操業再開当初の創世訊聯科技(深セン)有限公司の生産ライン。再開許可が下りても、従業員がいなければ休業同様だ Photo by Kota Takaguchi

 背景には地方政府の規制があった。深センでもエリアごとに規制は違うのだが、創世訊聯がある宝安区新安エリアの規制は特に厳しい。市外からの帰還者は14日間の自宅待機をしてからでなければ出勤を許さないというのだ。隣接する香港や東莞市に行くだけで14日間は出勤禁止、日本から来ても出勤禁止という厳しい制限。市内の他のエリアではここまで厳しく制限されていない。

 操業再開の連絡を受けて、故郷から深センに戻ってきた従業員たちも、2週間は働けないというわけだ。スマートフォンでドラマを見たり、動画共有サービスのティックトックを見たりして時間をつぶしているようだが、すっかり飽きているという。「早く働きたいです」とある従業員はこぼしていた。私としても働かせてやりたい。だがもし規定違反が見つかれば、工場の操業許可が取り消されてしまう。ここは従うしかない。2月15日時点で、全従業員の約半数が自宅待機中だった。

 残る半数はまだ深センに戻ってきてすらいない。彼らが帰ってこない理由は二つある。第一に恐怖だ。深センの1日当たりの新規感染者数はすでに1桁にまで減少していた。2月18日以降では1人しか確認されていない。発熱があればすぐに検査をされる状況でこの数なのだから、ほぼ抑え込みに成功したといってもいい。その意味では過度に恐れる必要はないのだが、中国の人々は猜疑心が強い。政府がどれだけ丁寧に発表しても、何か隠していることがあるのではと勘繰る。完全に収まるまでは様子見しようと考える者も多いのだ。