新型肺炎クライシス
北京市で旧正月休暇が明けた3日の、市内中心部の地下鉄駅の様子。いつもなら人でごった返す駅構内は、閑散としている Photo:Kevin Frayer/gettyimages

新型コロナウイルスによる肺炎(新型肺炎)の感染拡大に歯止めがかからない中、中国では10日、旧正月休暇が本格的に明けた。多くの地域で工場などの操業が一応、再開可能となる。だがさまざまな感染拡防止措置の影響で当面、中国でのビジネス活動は停滞する公算。活動量が著しく停滞し「仮死状態」となった中国ビジネスの現実を、現地からの声で描いた。(ダイヤモンド編集部特任アナリスト 高口康太)

戻れない湖北省出身の労働者
世界のエレクトロニクス産業が停止

「湖北省出身の労働者は深センにもにも相当いた。だが故郷で足止めされている人が多い。たとえ深センに戻ったとしても14日間の隔離が必要だ。彼らがいつ仕事に戻れるのか、現状では分からない」。広東省深セン市でEMS(電子機器受託製造)事業を営むジェネシス・ホールディングスの藤岡淳一社長は、そう語る。

 中国の旧正月休暇はもともと1月30日までだったが、中央政府の通達により2日まで延長された。さらに広東省政府により9日にまで再度延長されている。ちなみに湖北省では13日まで延長されているが、再度の延長は避けられないだろう。

 深センの企業は10日から操業再開することになるが、実際にはすべてが正常どおりとはいかない。まず、湖北省以外の労働者も戻りが悪い。肺炎への不安のため、あるいは故郷の農村が出入り禁止になったなど、理由はさまざまだろうが、人手という意味では湖北省以外の人々の動向のほうが影響は大きいと藤岡氏は言う。

 さらに当局の許可を得る必要がある。朝晩には従業員の体温検査を実施することが義務づけられており、正しく対策したことを当局に報告しなければならない。藤岡氏はすでに操業再開を申請済みだが、まだ当局の許可は下りていないという。膨大な申請が殺到しており、当局の業務が追いつかない状況にあると予測される。

 問題は深センのエコシステムがいつ回復するかが読めないことにある。

「湖北省の労働者は工場だけでなく、物流のようなサービス業など、深センの幅広い業態で働いていた。彼らが仕事に戻れない影響は小さくない」(藤岡氏)

 深センは世界のエレクトロニクス産業の中心地。現地では、藤岡氏の会社のような実際に製品を作る業態を中心に、川上の設計、川下の国際物流まで、関連の業態がフルセットで揃っている。そしてどの業態でも、地方からの出稼ぎ労働者がビジネスを支えてきた。だが、湖北省や浙江省、河南省など幅広い地域で住民の移動制限など肺炎拡大措置が続く中、産業の「動力源」だった労働者はなかなか深センに戻って来られそうにない。