パワフルな収益力と株式市場からの高い評価で、ハイテク企業として前人未到の高みに達したアップル。この超優良企業が中国発の新型肺炎を受け、業績予想の下方修正に追い込まれた。アップルは不運? 違う。中国あってこその超優良企業であり、中国が機能停止に陥れば、アップルの躍進も逆回転する構造なのだ。最強企業のサプライチェーンが、いかに「中国ありき」なのか。特集『断絶!電機サプライチェーン』(全8回)の#2は、その構造に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)
アップルの群を抜く営業利益率
その力の源泉はどこにあるのか
「Designed by Apple in California. Assembled in China.」
iPhone(アイフォーン)を始めとするアップル製品には、こう刻印されている。米国西海岸に本社を置くアップルは、自社では研究開発や設計、デザインといった工程を手掛ける。一方で製品の製造はサプライヤー企業に任せる、いわゆるファブレス型のビジネスモデルだ。
刻印の文言が隠さないように、このサプライヤーの大半が中国にある。最も有名なのは、組み立て工程を請け負う台湾のEMS(電子機器受託製造)、鴻海精密工業。鴻海を筆頭に、サプライヤーの拠点の47%が中国に集中している(出所:アップルの2019年版サプライヤーリスト)。
ファブレスモデルそのものはハイテク企業では珍しくないが、同様に外部委託している競合企業と比べても、アップルの収益性は抜きんでている。下図は、アップルと主な競合企業を、売上高の規模と収益性(営業利益率)で比較したもの。パナソニックは事業面ではほとんど競合していないが、参考として入れた。この図で一目瞭然な通り、アップルの売上高2602億ドル、営業利益率24.57%という値は突出している。
競合企業では、米HP(旧ヒューレット・パッカード)もパソコン生産の大半を鴻海などに委託している。またファーウェイ(華為技術)もスマートフォンの大多数を外部に生産委託する、「ファブライトモデル」を採用している。つまり単に生産委託しているということだけでは、アップルの高収益性は説明できない。
では何が力の源泉なのか。その答えは部品・部材や組み立て業務を提供するサプライヤーとの、極めて特異な関係にある。