都市人口の急激な増加が
被害の大きな要因
「気候変動が要因の一つですが、被害を大きくしているのは開発途上国の都市の急激な人口増加と脆弱な社会インフラです」(滝沢教授)
国連の予測によると、途上国の都市人口は18年の32億人から50年には約40%増の55億人になるという。「今でさえ慢性的な水不足なのに人口が40%も増えたらどうなるのか。想像を絶するというのが正直な感想です」(滝沢教授)。しかも、上下水道などのインフラ投資は遅々として進んでいない。途上国の水リスクは今後ますます顕在化していきそうだ。
SDGs(持続可能な開発目標)の目標6には「安全な水とトイレを世界中に」が掲げられているが、途上国での取り組みはどうなっているのだろうか。「各国がそれぞれの目標を掲げて進めているのは事実です。しかし問題は、本当に成果が上がっているのかをフォローアップできていないこと。例えば、水道料金メーターを設置しても壊れたまま放置され、定額料金になっているというケースもありました」(滝沢教授)
そこで、東京大学大学院工学系研究科ではJICA(国際協力機構)と連携し、途上国の水道事業体などの幹部候補を留学生として受け入れるプログラム「水道分野中核人材育成コース」を2年前に始めた。留学生は技術支援などを受けながら、自国の水道事業を評価して改善を図っていくという。とはいえ、プロジェクトは動き始めたばかり。成果が出るのはまだ先のことだ。