水リスクは日本企業の
ビジネスチャンスにもなる
こうした水リスクに対し、日本企業に今求められるリスクマネジメントは何か。
「特に途上国では、渇水や水害による水利用の制限や工場の操業停止、汚染水浄化に伴う水調達コストの増加、排水規制の強化などが起こる可能性があります。これらを前提に、生産拠点の移転計画や事業戦略を立てる必要があります」(滝沢教授)
グローバル化が進んだ現在、海外に進出していない企業も無関係ではいられない。サプライチェーンの中で必ずといっていいほど水リスクを抱えているからだ。海外のサプライヤーが災害によって原材料や部品を生産できなくなったり、水調達コストの上昇によって原材料が値上がりしたりすることも考えられる。自社のサプライチェーンのどこにどのような水リスクがあるかを検証し、対応策を立てておくべきだ。
また、欧米の機関投資家を中心に投資家が企業の水リスク対策を投資判断に取り入れ始めている。今後はこうした評価が株価や資金調達コストなどにも影響してきそうだ。「水」を活用したブランディングに取り組む企業も増え始めている。
滝沢教授はこうした事態が「逆に日本企業にとってはビジネスチャンスにもなる」と言う。「日本はかつて水不足や水害、水質汚染に苦しんだ時代があり、30~40年かけて水リスク対策の技術を蓄積してきました。例えば、工場の水リサイクル技術などは世界トップレベルです。こうした技術は日本企業の優位性として今後クローズアップされるでしょう」(滝沢教授)。