しかし、それまでは想像でしかなかったマイナス価格での取引が、より現実味を帯びることになったのは、CMEグループが4月3日に「エネルギー先物及びオプションのストライクプライスについて、マイナス価格での取引可能となるようにシステムを変更した」との通知が決定的だったのではいか。

 もちろん、マイナス価格での取引が禁じられていたわけではなかったが、システム対応ができていなければ事実上禁止されているに等しかった。そして、この制約がシステム上も外されたことで、コモディティはマイナス価格にはならないという前提条件が崩れることになる。

取引可能価格帯が無限大から
無限小まで拡大したリスク

 この変更はアウトライトの価格リスク、つまり価格の上下動を求めている投資家にとっては厳しいシステム変更となったのではないか。なぜなら、最悪の場合でもゼロでの売却が可能で、上昇したら無限大の利益が期待されていた投資商品の取引可能価格帯が、概念上ではあるが、無限大から無限小まで拡大してしまったからだ。

 それでは、すべてのコモディティがマイナス価格へと沈む可能性があり、それに備える必要があるのだろうか。その判断をするためには、先物取引が対象としている現物の性質や受渡し場所、その際の手順を踏まえる必要がある。受渡し手続きや長期間の保管が容易な金属などは石油やガスなどと比べるとマイナス価格にはなりにくい。

 こう考えるに至るポイントが2つある。1つはWTI原油が現物の受渡しが可能な契約であることだ。インターコンチネンタル取引所(ICE)に上場されている北海ブレント先物や、東京商品取引所(TOCOM)のドバイ原油も差金決済であり、現物の受渡しは伴わない。

 2つ目のポイントは受渡し方法で、WTI原油は本選受渡し(FOB、Free on Board)とされており、通常は米国オクラホマ州のクッシング地域内のパイプライン内または船上で行われる。原油の売り手はパイプライン上もしくは貯蔵タンクから原油を供給するだけで、買い手はパイプラインの使用許可や運搬船の手配を、何よりも自身の保管場所を前もって手配しておかなければならない。

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