受渡しの後にはこうした設備使用料に加えて、連邦税や州税など必要に応じて納付が必要となる。このように、石油現物取引の難易度は非常に高い。万一、受渡しを実施できないという事態になればノンデリバリー、いわゆる違約となってしまい、違約金の支払いが発生するだけなく、取引参加者としての信用も失うことになる。

 多くの機関投資家はこうした現物受渡しのリスクが及ばないよう、自身の先物ポジションを先の限月にロールオーバーするが、WTI原油の場合は、最終取引日が毎月22日前後に設定されていることもあり、月の最初の営業日から10営業日を目処にロールする投資家が多い。

 先物ポジションの構造上、投資家の買いポジションが比較的大きく、期近限月を売り、期先限月を買うというオペレーションが行われるため、市場全体には期近限月には下方圧力、期先限月には情報圧力がかかりやすい。今回のケースに当てはめると5月限を売り、6月限以降を買う、ということなる。ETF(上場投資信託)のような裁量的な投資を行わない投資商品も同様で、一定の時期にかつ機械的にこのようにロールオーバーを行う。

 貯蔵施設に余裕スペースがなく、仮にあったとしても近い将来に運び込まれる原油のために予約済みとされているように、北米原油の需給には余剰感だけで今は一切のタイト感はない。したがって新たな買い手は見つかり難いため、期近限月へは時々刻々と売り圧力が高まりつつ、投資家のポジションは逃げるように先へ先へとロールされた。

「買いポジション」で
大火傷を負った中国の投資家

 買い手にとっては、このように厳しい環境であったにもかかわらず、買いポジションが最終取引日の2日前まで残ってしまったのが、中国の大手商業銀行が投資家向けに販売していた「原油宝」と言われる金融商品に関するポジションだったことが、後に明らかになった。

 この商品はWTI原油価格にリンクした金融商品で、運用指図、つまり売買は投資家自身が行い、ポジションが残ってしまった場合は自動的にロールされる商品だという。3月後半から4月前半にかけてWTI原油先物5月限は20ドル台で支えられたが、産油国間での協調減産が実施される運びとなり、中国経済にもようやく回復の兆しが見え、久しぶりに原油市場にとっては明るい材料が出揃ったことで、買い手は自信を深めてしまったのかも知れない。

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反動高としてひどい上昇リスクも?

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