他方、受渡し場所となる米国では経済活動が止まり、石油が余っている状況となっていた。ポジション整理が終わり、取引が集中する中心限月は6月限へとロールされ、売り手は現物渡しを企図する参加者が多くなる一方で、現物を受けることに全く興味のない投資家筋の買いだけが、市場に晒されることになった。

 ゼロ未満での取引を可能にする準備もちょうど整ったところに、買い手不在の市場環境で投げ売りを強いられたのが中国の投資家だった。報道によれば、銀行から示された約定価格はバレル当たりマイナス37.63ドル、つまり1バレルを売るために37.73ドル支払うという結末となってしまった。この問題に関しては銀行が投資家へ説明を十分にせず、ハイリスクの商品を販売したとして争われるようだ。

原油価格の反動高として
ひどい上昇リスクも?

 今回のWTI原油の大暴落を振り返ると、そもそもは昨年来からの景気後退基調で原油需要が頭打ちとなったところに、産油国間の不協和音により需給調整が失敗し、コロナ禍による需要の消失が続き、最終取引日直前での投げ売りが仕上げとなって、このような悲劇が起きた。当面需要が戻らない、また戻ったとしても運輸セクターを中心に弱含みなことから、供給超過の状況が解消されるまでには相応の時間を必要とするだろう。

 しかし、投資家が期近中心限月でのオペレーショナル・リスクが高いことにも気づく機会となったことで、より期先限月へのオペレーションを選好するなど、限月の分散化が図られることになり、期近限月に集中していた売り圧力が今後和らぐことが想起される。そして、この価格帯が続くと、いかなる生産者も持続的な生産活動は不可能であり、特に商業色の濃い米国のシェールオイル生産は急速に減少すると考えられる。

 現在の価格帯を基準にすれば、小幅なマイナス圏で取引される可能性は残されてはいるものの、マイナス40ドルという価格まで下落することはおそらくないだろう。

 生産回復までの間、今度は原油価格の反動高としてひどい上昇リスクを招く怖れが同居した暴落ではなかったのではないかと考えている。

(住友商事グローバルリサーチ 経済部 担当部長 チーフエコノミスト 本間隆行)

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