コロナショックに世界経済が震えている。金融システムと実体経済の間にある「負の連鎖」が起動すれば、ショックは金融危機へと「変異」する。変異はぜがひにでも回避しなくてはならない。金融システムの安定に身を捧げてきた前日銀副総裁が新型コロナ防衛戦の要諦を語る。

なかそ・ひろし/大和総研理事長。1978年東京大学卒業。日本銀行入行。金融危機時の97年は信用機構課長、その後、金融市場局長、国際決済銀行市場委員会議長、理事を経て2013年副総裁に就任。19年に東京国際金融機構会長に就任。

 新型コロナウイルスの感染拡大の脅威に晒された世界は、今日コロナショックとも呼べる重大な経済危機に直面しています。コロナショックは、新型ウイルスの突然の出現によって経済に対して外生的に加えられたショックですが、感染が拡大し長期化すると、世界の金融システムを損傷し全面的な経済・金融危機へと、症状を致命的に悪化させる問題に「変異」する可能性があります。

 日本は、過去20年に二度にわたる金融危機に見舞われました。その経験をコロナショックへの対応にも生かせるはずです。危機対応から得られた重要な知見は、ひとたび金融システムの機能が失われると実体経済との間で相乗作用を繰り返しながら経済活動の萎縮を増幅する「負の連鎖」が働くということです。したがって、コロナショックへの処方箋は、「負の連鎖」に陥らないように金融システムの防御を固め、影響を受けた企業を支援する機能を維持していくことです。

 そこで、以下では、まず、過去の金融危機の経験を踏まえ、金融システムを揺るがすメカニズムについて改めて点検し、現下のコロナショックへの金融面からの対応を評価します。その上で、金融危機を未然に封じ込めるために整備されてきた金融安全網の現状と課題について整理したいと思います。