社外取締役の
あるべき姿を考える

 社外取締役への期待は実情以上に高まっていますが、それに伴い、失望や諦めの声も聞こえてきます。

林:取締役会の機能を強化するに当たり、我々は、まず人選、そして運用、つまり何を議論するのかの2点に注目しています。

 まず人選についてですが、社外取締役は社外のステークホルダーの代表として厳しく業績を評価すると同時に、企業からは投資効率を高めるシナリオ、事業開発や事業ポートフォリオに関する長期的な見通しに関する意見や提言が期待されており、したがってビジネスの知識と経験、当該企業の事業への深い理解が欠かせません。

 経営経験のない社外取締役だけでは、ビジネスの知見や経験をベースとした業績向上のためのアイデア・助言を期待するのは難しいものの、一方で、このような社外取締役は過去の事例・ビジネス慣行に縛られすぎないところがあり、自身の専門性を武器に社長に忖度なく直言できるという強みを持っているともいえます。社外取締役の人数を増やしていくうえで、難しいですが、やはりバランスが大切です。

土屋:そのためにも、人選に関するプロセスでは、社外取締役に何を期待するのか、具体的に明らかにすることから始めてはいかがでしょう。

 たとえば、先ほど申し上げた財務リテラシーが高いとか、多くの企業にとって喫緊の課題となっているデジタル・トランスフォーメーションに明るいとか、あるいは今後注力していく予定の国や地域に強いなど、各社によって必要な人材は異なるはずです。

 企業価値向上の観点から、社内取締役も含めた取締役会のチーム編成全体を考えて、ふさわしい社外取締役の要件を特定すれば、取締役会における審議をより実のあるものにできます。

 CGコードが求める取締役会の多様性を確保するために、女性や外国人を登用する動きが広がっていますが、員数合わせではなく、事業戦略の遂行能力・リスクを把握する能力を踏まえた人選がやはり大前提です。

 社外取締役との関係が深まることで監督や牽制が甘くなったり、馴れ合いや忖度が生まれたりするおそれはありませんか。

林:たしかに悩ましいところで、「現場の気持ちがわかるようになったら辞め時だ」と言われる社外取締役もいます。社外取締役の任期は会社法で2年と定められています。再任の上限は定められていないため、多くの会社で6~8年程度の在任期間となっているように思います。一概に言えませんが、環境変化に応じて社外取締役への期待も変わることを考えると、長くても6年くらいが妥当ではないでしょうか。

土屋:適任者がいないといわれていますが、けっしてそんなことはありません。日本には東証だけでも3000社超の上場企業があり、それぞれの企業に複数の社内取締役がいます。換言すれば、これまで歩んできたキャリア、持っているスキルや知識はさまざまでも、経営経験の有無でいえば、大変な数の人材プールがあるわけです。