「カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンス」設立から約1年後の2022年3月10日、設立1周年を記念して「ダイヤモンドクォータリー特別フォーラム」が開催された。『ダイヤモンドクォータリー』では、企業変革すなわち「X経営」を取り上げているが、とりわけ注目しているのが、グリーントランスフォーメーション経営(GX経営)だ。特別フォーラムでは、タイトルに「カーボンニュートラルはGX経営から始まる」を掲げ、先進企業が登壇。キーパーソンによるセッションと、パネルディスカッションが行われた。

カーボンニュートラル実現の切り札、「GX経営」とは何か【イベントレポート】

※本コンテンツは、2022年3月10日に開催されたダイヤモンド社ビジネスメディア局主催(企画:ダイヤモンドクォータリー編集部、協賛:カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンス)ダイヤモンドクォータリー特別フォーラム「カーボンニュートラルはGX経営から始まる」の内容を採録したものです。

3つのビジョンで「多様なトランジション手段の提供」を目指す

 オープニングセッションを務めたのは、カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンスを取りまとめる、東京ガス取締役代表執行役社長の内田高史氏。内田氏は、「東京ガスのGX経営 責任あるトランジションの貫徹」をテーマに、同社のGXの取り組みを紹介した。

カーボンニュートラル実現の切り札、「GX経営」とは何か【イベントレポート】東京ガス取締役代表執行役社長 内田高史氏

 「昨今パーパス経営が注目されていますが、東京ガスが良き企業市民として存在し続けるためには、社会にある種の共通善である価値を、経営を通じて提供し続ける必要があると考えております。その価値提供こそ東京ガスグループの社会的使命である、『エネルギー企業としての供給安定性と価格安定性の責務を全うしつつ、お客様と社会に寄り添った責任あるトランジションを貫徹し、カーボンニュートラル社会の実現をリードすること』です。足もとの社会環境は国際情勢を含め激動の時代ですが、その中にあっても東京ガスグループはこの社会的使命を果たし続けることを、本日改めてお約束します」(内田氏)

 内田氏がGX経営を実践する上でポイントに挙げたのは、「自立自走型のグループ体制」と「社員の多様性」だ。東京ガスグループでは、脱炭素社会の実現という壮大な挑戦に取り組むべく、高い専門性と多様性を通じた斬新な発想を育むことを目的に、グループ人事の改革を推進している。高度な専門家集団が能力を余すことなく発揮できる体制の確立を目指し、2022年4月からホールディングス型グループ体制を敷き、各組織が変革を進めているという。

  「外部環境の変化に対して、素早く適応可能な自律自走型のグループ体制と、多様性を生かす人事制度の両輪で、トランジションの手段を提供してまいります」(内田氏)

 多様なトランジション手段の提供としては、「ガス体&再エネ」「供給側&需要側」「革新的イノベーション&漸進的イノベーション」という3つのビジョンを掲げている。

 東京ガスグループは、電力起源以外のCO2排出量の大半を占める「熱」の低炭素化・脱炭素化に取り組むが、経済性やレジリエンス、エネルギー需要密度などの観点から見れば、「引き続き熱需要にはガス体エネルギーの活用も必要」と判断している。

 そこで内田氏は、「ガス体と再エネを両輪に複数手段の活用が欠かせず、同時にそれらは供給側・需要側それぞれのシーンで、革新的イノベーション(水素、メタネーション、CCUなど)と漸進的イノベーション(現行の最良の技術)の双方を同時並行的に進行しなければならない」と、アプローチを語った。

 なお、東京ガスのグループ経営ビジョン「Compass2030」の中では「3つの挑戦」とその具体的な道筋(Compass Action)が定められているが、内田氏がその「一丁目一番地」に据えるのも「CO2ネット・ゼロへの移行をリード=エネルギーの安定供給を絶やさず、地に足の着いた現実感あるカーボンニュートラル社会への移行を主導する」である。