これから日本はどうなるのか?

「生む」と「育てる」は別です。日本政府には一刻も早く、両方が充実した社会づくりをお願いしたいところです。

 例えば、フランスやスウェーデンなどは政府が積極的な少子化対策を講じたことで、人口置換水準(合計特殊出生率2.1程度)に近づくまで合計特殊出生率が回復しました。

 フランスでは1990年代以降に、保育の充実などによって、出産・育児と労働の両立を支援する取り組みを進めました。1993年に1.73と底を打った合計特殊出生率は、その後、2010年には2.03にまで回復しました(2019年は1.87)。

 またスウェーデンでも、出産・育児と労働の両立を支援しました。子どもの数に応じて加算される児童手当制度、両親保険(1974年より導入された両親が取得できる育児休業の収入補塡制度)などです。

 スウェーデンは1998年に1.5だった合計特殊出生率が2010年には1.98にまで回復しました(2019年は1.70)。

 日本は、2005年に1.26と底を打ち、2015年には1.45にまで回復しました。

 しかし、50年近く合計特殊出生率が低下傾向にあったため、そもそも母親になる人数が減っており、出生数の大幅な改善には至っていません。2人目が生まれた段階での手厚い給付制度を創設するなどの政策が早急に必要と考えられます。

(本稿は『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)

宮路秀作(みやじ・しゅうさく)
日本で少子化が進む「残酷すぎる理由」とは?【書籍オンライン編集部セレクション】

代々木ゼミナール地理講師、日本地理学会企画専門委員
鹿児島市出身。「共通テスト地理」から「東大地理」まで、代々木ゼミナールのすべての地理講座を担当する実力派。地理を通して、現代世界の「なぜ?」「どうして?」を解き明かす講義は、9割以上の生徒から「地理を学んでよかった!」と大好評。講義の指針は「地理とは、地球上の理(ことわり)である」。生徒アンケートは、代ゼミ講師1年目の2008年度から全国1位を獲得し続けており、また高校教員向け講座「教員研修セミナー」の講師や模試作成を担当。いまや「代ゼミの地理の顔」。2017年に刊行した『経済は地理から学べ! 』はベストセラーとなり、これが「地理学の啓発・普及に貢献した」と評価され、2017年度の日本地理学会賞(社会貢献部門)を受賞。大学教員を中心に創設された「地理学のアウトリーチ研究グループ」にも加わり、2021年より日本地理学会企画専門委員会委員となる。「Yahoo! ニュース」での連載やラジオ出演、YouTubeチャンネルの運営など幅広く活動。