これは、工場労働のオートメーション化が急速に進行しつつあった当時のことだが、コンピューター化による省力化が進行している今日、そこに立ち返って考えてみる必要があるだろう。AIの発達により非常に便利な社会が出現しつつあるが、それと並行して仕事の単純労働化が進行していることも無視できない。

モチベーションを高める職務特性とは?

 単純なルーティンの繰り返しではつまらないというのは、ちょっと考えればすぐ分かるだろう。モチベーションを高めるには、仕事がつまらないと感じさせることは避けなければならない。仕事を楽しいと感じられれば、モチベーションは高まるはずだ。仕事を楽しめるようにするには、仕事を単純化してラクさせることを考えるより、仕事を適度に複雑化する方がよいということになる。

 心理学者のハックマンとオルダムは、そのような観点に立って、職務というものは、有意義感の欲求、責任の欲求、フィードバックの欲求などを満たす必要があるとし、このような欲求を満たす仕事のことを「充実した仕事」と呼んだ。そして、モチベーションを高める職務特性として、以下の五つの要素を挙げている。

(1)多様性:単調でなく、多様な操作やスキルが必要だったり、変化があったりすること
(2)完結性:部分的な作業をするだけでなく、仕事全体を見渡せ、自分の仕事の位置づけができること
(3)重要性:社会的意義が分かるなど、やっている仕事の重要性や有意味性が感じられること
(4)自律性:命じられるままに作業をするというのでなく、自ら計画を立てたり、方法を工夫したりして、自律的に取り組めること
(5)フィードバック:自分の仕事の結果が分かり、今後の改善のための有益な情報が得られること