仕事に慣れるのに必死だった20代から30代。その後も一生懸命に駆け抜けてきた働き盛りの30代から40代……そして、定年後も含め先のことが気になってくる50代になると、多くの人は歩みを止め、自分の人生を振り返るようになる。それは気持ちに余裕が出てきたといった面もあるだろうが、後悔や焦りにさいなまれることにもなりがちだ。50代をどう乗り越えるかによって、その後の人生のあり方は大きく違ってくる。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)
50代になって突然襲ってくる空虚感と焦り
中年期の危機と言われるように、働き盛りの40代を過ぎる頃になると、これまでの人生を振り返って、むなしさを感じたり、後悔にさいなまれたりするようになる。それと同時に、これからどうしたらより納得のいく人生にしていけるかが無性に気になってくる。
私自身、そうした年代の頃、自分自身の生き方をめぐっていろいろ思い悩んだものだった。その頃の雑記帳には、次のような言葉が記されている。
・手帳が予定で埋まるとホッとする、それはむなしさを覆い隠す戦略だ
・「自分らしさ」をつかむヒント、それは心の中の自叙伝にある
・変わることを恐れない、それが自分らしさを手に入れる条件だ
・「どこかにほんとうの自分の生活があるはず」、それは逃げだ
・「あれもしたい、これもしたい」はよいが、「いつか何かしたい」は問題だ
・行動を伴わない構想のことを妄想という
・人生は「今」「今」「今」の連続だ
・我慢するのにエネルギーを費やすか、生活を変えるのにエネルギーを費やすか、そのどちらかだ
・ちょっとペースを変えてみる、そこに新たな自分が見えてくる
・「人生の意味」という言葉が気になるとき、私たちは日々の生活にもっと意味を感じたいのだ
・人生は偶然によってつくられる、問題は、それをどう生かすかだ
・「これでいいんだろうか?」と思い悩むとき、すでに前向きの一歩を踏み出している
・むなしさに押し潰されそうな思い、それは「より良く生きたい気持ち」のあらわれだ
これらは、人生のむなしさに悩む人たちの相談に乗りながら、自分自身の生き方をめぐる迷いと向き合っていたときに、ふと浮かんできた言葉だ。